判例まとめ ・ 第1章 労基法の総則と「労働者」
1-5関西医科大学研修医事件(臨床研修医と労働者)最判平17.6.3
| 裁判所 | 最高裁判所第二小法廷 |
|---|---|
| 年月日 | 平成17年6月3日 判決 |
| 事件番号 | 平成14(受)1250 |
| 結論 | 臨床研修医は、病院の指揮監督のもとで医療行為などをしたと評価できる限り労基法9条の労働者にあたる。最低賃金との差額の支払いを命じた原判決を維持し、病院側の上告を棄却 |
| 原文 | 裁判所ウェブサイト |
ポテ研修医は「勉強しに来ている人」だから、労働者じゃないですよね!
ロウ先生臨床研修には教育の面もあります。それでも、指導医のもとで医療行為などに携わることは、病院のための労務提供という面を必ず持つとされました。
ポテえっ、そうなの!?じゃあ研修医はみんな自動的に労働者?
ロウ先生「病院の指揮監督のもとで行ったと評価できる限り」労働者にあたる、という言い方です。この研修医は、病院が決めた時間と場所で指導医の指示に従っていて、労働者とされました。
ポテなるほど!「見習い」の名札でも、お店の指示でお客さんにおやつを出していたら、それはお仕事なんですね!
事案の概要
学校法人Yは大学の附属病院を開設していました。乙は、平成10年に医師国家試験に合格して医師免許を受け、同年6月1日からこの病院の耳鼻咽喉科で臨床研修を受けていましたが、8月16日に亡くなりました。研修のプログラムは2年間で、1年目は外来診療で問診・検査・診断・処置・小手術を経験し、入院患者の主治医を務めることなどを通じて診療の基本を学ぶものでした。
乙の研修の中身は、午前7時30分ころから入院患者の採血、8時30分ころから点滴、9時から昼過ぎまで外来の検査予約・採血の指示・診察の補助・問診・点滴・処方せんの作成、午後は専門外来の見学と補助、午後4時30分ころから6時ころまで自己研修、6時30分ころから入院患者の点滴、7時以降は処置の補助(指導医が不在のときなどは単独で処置することもある)、指導医が当直のときは翌朝まで病院内で待機する副直、というものでした。乙は、休診日などを除き、原則として午前7時30分から午後10時まで、病院内で指導医の指示に従って研修に従事すべきこととされていました。
Yは乙に、奨学金として月額6万円と、副直1回あたり1万円の手当を払い、これらを所得税法上の給与等として源泉徴収していました。乙の両親は、乙は労基法9条・最低賃金法上の労働者なのに最低賃金額に満たない額しか払われていなかったとして、その差額の賃金の支払いを求めました(両親の一方は上告審の途中で亡くなり、相続人が引き継いでいます)。
争点
- 教育の面を持つ臨床研修を受ける研修医は、労基法9条の「労働者」(したがって最低賃金法上の労働者)にあたるか
判断(詳細)
- 一般論(臨床研修の性質)。研修医は医師国家試験に合格して免許を受けた医師で、医療行為を業として行う資格を持っています。当時の医師法16条の2第1項は、免許を受けた後も2年以上、大学の附属病院などで臨床研修を行うよう努めるものとしていました。この臨床研修は医師の資質の向上を目的とし、教育的な側面を持ちますが、プログラムに従い、臨床研修指導医の指導のもとで研修医が医療行為などに従事することを予定しています。
「研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には,これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり,病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り,上記研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たるものというべきである。」
- あてはめ。この病院の研修プログラムは研修医が医療行為などに従事することを予定しており、乙は、休診日などを除き、Yが定めた時間と場所で、指導医の指示に従って、Yが患者に提供する医療行為などに従事していました。さらにYは、乙に奨学金などとして金員を払い、給与等として源泉徴収までしていました。
- 結論。乙はYの指揮監督のもとで労務を提供した労基法9条の労働者で、最低賃金法上の労働者にもあたります。したがってYは、最低賃金法により、最低賃金と同額の賃金を支払う義務を負っていました。これと同じ原審の判断を正当とし、裁判官全員一致で上告を棄却しました。
試験のポイント
- 結論は「研修医は労働者にあたる」。教育的な側面があっても、医療行為などへの従事は病院のための労務の遂行という側面を「不可避的に」持つから。
- ただし無条件ではなく、「病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り」労働者にあたる、という条件付きの言い方。
- あてはめで使われた事実: 病院が定めた時間・場所で、指導医の指示に従い、病院が患者に提供する医療行為に従事していたこと、「奨学金」の名目でも金員が払われ、給与等として源泉徴収されていたこと。
- 労基法上の労働者にあたるので、最低賃金法上の労働者にもあたり、最低賃金との差額の支払いが認められた(請求したのは研修医の両親)。
- 横浜南労基署長(旭紙業)事件(トラック持込み運転手は労働者にあたらない)と結論が逆。どちらも指揮監督のもとでの労務提供かどうかで判断している。
ひっかけ注意「臨床研修は教育を目的とするものなので、研修医は労基法上の労働者にあたらない」は誤りです。教育的な側面はあっても、病院の指揮監督のもとで医療行為などをしたと評価できる限り労働者にあたるとされました。また「支払われていたのが『奨学金』の名目だったので、賃金ではなく最低賃金法の問題にならない」も誤りです。給与等として源泉徴収までされていたことも、労働者性を認める事情とされました。
関連条文・テキスト
労働基準法9条(労働者の定義)、最低賃金法2条、医師法16条の2第1項(いずれも当時のもの)。テキスト: 労基 2-3
暗記研修医=病院の指揮監督のもとで医療行為などをしたと評価できる限り労働者(労基法9条)。教育の面があっても、病院のための労務の遂行という側面は避けられない。
覚え方「白衣の見習いも、指示で動けば働き手」……臨床研修には教育の面があるが、指導医の指導のもとでの医療行為などは病院のための労務の遂行という側面を必ず持つ。病院の指揮監督のもとで行ったと評価できる限り、研修医は労働者にあたり、最低賃金法も適用される。
- 1臨床研修には教育の面がある
- 2指導医の指導のもとで医療行為などをする
- 3病院のための労務の遂行という側面を必ず持つ
- 4病院の指揮監督のもとと評価できる限り労働者最低賃金法も適用される

ポテ白衣の見習いも働き手!