雇用保険法 ・ 第1章 雇用保険の全体像
1-1失業・在職中・育児の場面を支える目的第1条
雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合並びに労働者が子を養育するための休業及び所定労働時間を短縮することによる就業をした場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。
ポテ雇用保険って、仕事をなくしたときだけ出るお金ですよね?
ロウ先生第1条が挙げる給付の場面は4つです。失業したとき、雇用の継続が困難になったとき、自ら教育訓練を受けたとき、子を育てるために休業や時短就業をしたときです。
ポテじゃあ、社長に「行ってこい」って言われた研修でもOK?
ロウ先生条文は「自ら」受けた教育訓練です。本人が自分の意思で受ける訓練が対象ですよ。
ポテなるほど!自分で選んだおやつだから応援してもらえるんだ〜。
雇用保険は「仕事を失ったときのお金」だけの制度ではありません。第1条を読むと、働く人の人生のいくつもの場面に手を差し伸べる仕組みだとわかります。
給付が出る4つの場面
第1条が挙げる「給付を行う場面」を、具体的な姿に置き換えてみます。
| 条文の言葉 | たとえばこんな場面 | 対応する主な給付 |
|---|---|---|
| 失業した場合 | 会社が倒産して職を失った | 基本手当などの求職者給付 |
| 雇用の継続が困難となる事由が生じた場合 | 60歳を過ぎて賃金が大きく下がった、親の介護で休業する | 高年齢雇用継続給付・介護休業給付 |
| 自ら職業に関する教育訓練を受けた場合 | 働きながら資格講座に通った | 教育訓練給付 |
| 子を養育するための休業・所定労働時間を短縮しての就業をした場合 | 育児休業を取った、子が小さいうちは時短で働く | 育児休業等給付 |
4つめの「所定労働時間を短縮することによる就業」は、育児時短就業給付の創設にあわせて令和7年4月1日に加わった言葉です。育児の場面は休業だけでなく、時短勤務まで支える形になりました(詳しくは6-5)。
目的は二段構え
条文の後半は、目的が2つの層に分かれています。
- 給付で直接ねらうこと … 労働者の生活と雇用の安定を図り、求職活動をしやすくするなどして就職を後押しすること。
- 「あわせて」ねらうこと … 職業の安定に役立つよう、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大、能力の開発と向上、その他の福祉の増進を図ること。
①は失業等給付と育児休業等給付が受け持ち、②は雇用安定事業と能力開発事業(いわゆる二事業)が受け持ちます。この対応関係は1-3で地図にして確認します。
ことばの確認
「労働者」について、行政手引20004は次のように整理しています。事業主に雇われ、その事業主から受け取る賃金で暮らしている人が典型です。さらに、雇われて暮らしを立てようとしているのに、本人の意に反して今は働けていない人も含まれます。失業中の人もこの言葉に入る、という点が雇用保険らしいところです。
制度の歩み
今の姿は、少しずつ給付を足してできあがりました。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 昭和22年11月 | 前身の失業保険法が制定される |
| 昭和49年12月 | 全面的に改められ、雇用保険法となる(施行は昭和50年12月) |
| 平成7年4月 | 育児休業給付を新設。同時に、60歳以降の賃金低下を補う高年齢雇用継続給付も新設 |
| 平成10年12月 | 教育訓練給付が始まる |
| 平成11年4月 | 介護休業給付が始まる |
| 令和7年4月 | 育児の給付を拡充(時短勤務向けの給付、両親の休業への上乗せ給付を新設) |
具体例で考える
物流会社に勤める佐伯さん(38歳)の10年を追ってみます。30歳で第一子が生まれて育児休業を取り、復帰後しばらくは時短勤務をしました。35歳のとき、夜間の専門学校で物流管理の資格を取りました。38歳で会社が事業を縮小し、離職して次の仕事を探しています。この3つの出来事は、いずれも第1条が想定する場面です。雇用保険は、失業という「点」ではなく、働く期間を通した「線」で人を支える制度だといえます。
暗記目的の後半は「生活及び雇用の安定」「求職活動を容易に」「失業の予防」「雇用状態の是正」「雇用機会の増大」「能力の開発及び向上」「福祉の増進」。前半の4場面は「失業 → 雇用継続困難 → 自ら教育訓練 → 子の養育の休業・時短就業」の順。
覚え方「働く人生の4コマ漫画」……1コマ目は失業、2コマ目は雇用の継続が困難、3コマ目は自ら教育訓練、4コマ目は子の養育のための休業・時短就業。第1条が挙げる給付の場面はこの4つで、この順に並ぶ。「継続」を「維持」、「自ら」を「事業主の命により」に変えたひっかけに注意。
- ○労働者が失業した場合
- ○雇用の継続が困難となる事由が生じた場合
- ○自ら職業に関する教育訓練を受けた場合
- ○子を養育するための休業・時短就業をした場合
- ×雇用の「維持」が困難(条文は「継続」)
- ×「事業主の命により」教育訓練(条文は「自ら」)

ポテ4コマ漫画の順番で覚えよう!
ひっかけ注意選択式では語句の入れ替えが定番です。「雇用の継続が困難」を「雇用の維持」に、「自ら職業に関する教育訓練を受けた」を「事業主の命により」に、と変えた選択肢に注意してください。教育訓練給付は、本人が自分の意思で受ける訓練が対象です。