雇用保険法 ・ 第1章 雇用保険の全体像
1-2政府が運営し、窓口は公共職業安定所第2条・第81条・令第1条・則第1条
① 雇用保険は、政府が管掌する。
② 雇用保険の事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。
ポテ雇用保険って、どこかの保険会社がやってるんですか?
ロウ先生保険会社ではなく、国(政府)が運営します。条文の「管掌」は、保険の運営元(保険者)として責任を持って切り盛りする、という意味です。
ポテえっ、そうなの!?じゃあ手続は全部、大臣が自分でハンコを押してるの?
ロウ先生第81条で、大臣の権限の一部は都道府県労働局長へ、さらに公共職業安定所長へと二段階で委任できます。
ポテなるほど!バケツリレーでハローワークの窓口まで届くんだね〜。
保険には「誰が運営するのか」という問題がつきものです。雇用保険は民間の保険会社ではなく、国(政府)が保険者になります。これを「政府が管掌する」と表現します。
3段の組織
実際に仕事をする役所は、国の中で3つの段に分かれています。
| 段 | 役所 | 権限を持つ人(行政庁) |
|---|---|---|
| 中央 | 厚生労働省 | 厚生労働大臣 |
| 地方 | 都道府県労働局 | 都道府県労働局長 |
| 地域の窓口 | 公共職業安定所(ハローワーク) | 公共職業安定所長 |
法律の条文では「厚生労働大臣が行う」と書かれていても、実際には労働局長や安定所長が処理していることが多くあります。その根拠が次の第81条です。
大臣の権限を下ろしていく(第81条)
① この法律に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。
② 前項の規定により都道府県労働局長に委任された権限は、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所長に委任することができる。
大臣 → 労働局長 → 安定所長と、二段階で権限を渡せる仕組みです。則第1条によって、たとえば次の権限は安定所長まで下りています。
- 被保険者に関する届出(第7条)を受け付け、その者が被保険者になったか・ならなくなったかを確認すること(第9条第1項)
- 65歳以上の複数就業者が高年齢被保険者になるための申出を受け、通知すること(第37条の5。12-2)
- 短期雇用特例被保険者に当たるかどうかを確認すること(第38条第2項。2-7)
都道府県知事が受け持つ事務
第2条第2項を受けた令第1条は、知事に任せる事務を絞り込んでいます。能力開発事業のうち、職業能力開発促進法の計画に沿って職業訓練をする事業主などへ助成する事業の実施事務です。どの知事が担当するかは、適用事業の事業所がある都道府県で決まります(則第1条第3項)。
どこの安定所が扱うか(則第1条第5項)
窓口の安定所は、手続によって「事業所の場所」で決まるものと「本人の住所」で決まるものがあります。
| 手続 | 基準になる場所 | 呼び方 |
|---|---|---|
| 介護休業給付・育児休業等給付の手続 | 被保険者を雇っている事業主の事業所の所在地 | 所轄公共職業安定所 |
| 教育訓練給付金・教育訓練休暇給付金の事務 | 教育訓練給付金支給対象者・教育訓練休暇給付金支給対象者の住所または居所 | 管轄公共職業安定所長 |
| 短期雇用特例被保険者かどうかの確認 | その人を雇っている(雇っていた)事業主の事業所の所在地 | ― |
| 未支給の失業等給付の請求(14-1) | 亡くなった受給資格者等の死亡当時の住所または居所 | 死亡者に係る公共職業安定所長 |
具体例で考える
熊本市に住み、福岡市の本社に通う会社員の宮本さんを考えます。宮本さんが育児休業を取ると、給付の手続は会社の事業所がある福岡市側の安定所(所轄)で進みます。一方、宮本さんが自分で資格講座を受けて教育訓練給付金を申請するなら、住所地である熊本市側の安定所(管轄)が窓口です。同じ人でも、手続の種類で窓口が変わります。
ポイント会社が関わる在職中の給付は「事業所」、本人が自分で動く給付は「住所」と考えると、表の大半は整理できます。
ひっかけ注意短期雇用特例被保険者の確認を「本人の住所地を管轄する都道府県知事」が行う、とする選択肢は誤りです。確認するのは、その人を雇い、または雇っていた事業主の事業所を管轄する公共職業安定所長です(令和元年択一)。
覚え方「大局(大臣・局長)を所(所長)まで下ろす」……厚生労働大臣の権限は一部を都道府県労働局長に委任でき、それをさらに公共職業安定所長に委任できる(第81条)。窓口は、育児休業等給付・介護休業給付は事業所の所在地、教育訓練給付金は本人の住所または居所で決まる(則第1条第5項)。
- 育児休業等給付
- 介護休業給付
- 教育訓練給付金