社会保険に関する一般常識 ・ 第1章 家族の支えから社会の支え合いへ ― 社会保険の出発点
1-3工場労働者の健康保険から国民皆保険までの医療の歩み健康保険法・国民健康保険法(沿革)
国民健康保険法第1条 この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする。
国民健康保険法附則第1条 この法律は、昭和三十四年一月一日から施行する。
ポテ社会保険って、イギリス生まれって聞いた気がする!
ロウ先生いちばん乗りはドイツですよ。19世紀の後半、ビスマルクの時代に疾病保険が作られました。
ポテじゃあ日本の健康保険は、昭和2年にできたんですよね?
ロウ先生法律ができたのは大正11年で、昭和2年1月は全面的に動き出した時期です。「作った年」と「動き出した年」は分けて覚えましょう。
ポテおやつも、買った日と食べた日はちがうもんね!
医療保険の歴史は、「一部の労働者だけの保険」が「全国民の保険」へ広がり、さらに「高齢者の医療と介護をどう支えるか」に悩んできた道のりです。年金の歩み(1-2)と並べると、どちらも昭和36年4月に「皆」が実現している点が目印になります。
出発点 ドイツから日本へ
- 世界で初めての社会保険は、19世紀後半のドイツで、宰相ビスマルクのもとで作られた疾病保険です。
- 日本では大正11年に健康保険法が作られ、昭和2年1月から給付を含めて全面的に動き出しました。はじめの対象は工場などで働く労働者本人で、仕事が原因の病気やけがも給付していました。
- 昭和13年には国民健康保険法が作られました。当時は、市町村の区域ごとや同じ職業の人ごとに、任意に作る国民健康保険組合が保険者で、入るかどうかも任意でした。
- 昭和14年には船員保険法が作られ(施行は昭和15年)、病気の治療、仕事中の災害、年金をひとつの制度でまかなう総合的な社会保険として注目されました。
全国民が医療保険に入るまで
戦後、昭和25年の社会保障制度審議会の勧告などをきっかけに、医療保険をすべての国民に広げる議論が進みました。昭和33年に国民健康保険法が新しく作り直され、すべての市町村が国保を行わなければならなくなりました(施行は昭和34年1月)。こうして昭和36年4月、すべての国民がいずれかの医療保険に入る国民皆保険がそろいました。
高齢化への対応をたどる
| 年 | 何が変わったか |
|---|---|
| 昭和47年改正(昭和48年実施) | 老人福祉法を改め、70歳以上の人の自己負担を公費で肩代わりする老人医療費支給制度を作る |
| 昭和48年 | 健康保険の家族の給付を7割に。負担が一定額を超えた分を払い戻す高額療養費が始まる |
| 昭和57年制定(昭和58年実施) | 老人保健法ができる。高齢者にも一部負担を求め、各保険者がお金を出し合って老人医療を支える形にする |
| 昭和59年 | 健康保険の本人の給付を9割に。会社を退職した人のための退職者医療制度ができる |
| 平成9年 | 介護保険法ができる(施行は平成12年)。健康保険の本人の給付を8割に |
| 平成15年 | 健康保険の本人の給付を7割に。総報酬制を取り入れる |
| 平成20年4月 | 法律の名前が老人保健法から高齢者の医療の確保に関する法律へ。75歳になると移る後期高齢者医療制度がスタート。特定健康診査を保険者の義務にし、高額介護合算療養費を設ける |
| 平成20年10月 | 国が運営していた健康保険(政府管掌)の仕事を、新しくできた全国健康保険協会(協会けんぽ)が受け継ぐ |
| 平成30年 | 国民健康保険を都道府県単位に。都道府県も市町村とともに保険者になる |
| 令和3年 | マイナンバーカードなどで加入資格を確かめるオンライン資格確認が本格的に始まる |
| 令和4年 | 傷病手当金の支給期間を通算して数える形に。75歳以上で一定以上の所得がある人の窓口負担を2割に |
| 令和6年 | 75歳以上の医療制度からも、子どもが生まれたときの出産育児一時金にお金を回す形に(4月)。被保険者証の廃止と資格確認書の導入(12月) |
ポイント令和8年4月からは、子ども・子育て支援法にもとづき、医療保険者が医療保険の保険料と合わせて「子ども・子育て支援金」を集め、少子化対策の財源として国に納める仕組みが動いています。
具体例で考える
大正時代に紡績工場で働いていたDさんの家族を想像してみます。昭和2年、工場で働くDさん本人は健康保険で治療を受けられるようになりましたが、農家の親せきには使える保険がありません。昭和13年に国保ができても、組合のない村では入れませんでした。親せきが確実に医療保険に入れるようになったのは、市町村に国保が義務づけられ、皆保険がそろった昭和36年4月のことです。
ひっかけ注意世界初の社会保険はドイツで、イギリスではありません。健康保険法は大正11年が「制定」、昭和2年が「全面施行」。国民皆保険と国民皆年金は、どちらも昭和36年(4月)です。介護保険法は「平成9年制定・平成12年施行」の組み合わせで覚えます。
暗記健康保険法=大正11年/国民健康保険法=昭和13年(新法は昭和33年)/船員保険法=昭和14年/国民皆保険=昭和36年4月/老人保健法=昭和57年/介護保険法=平成9年制定・平成12年施行/後期高齢者医療=平成20年4月。
覚え方「いい(11)ひ、けんこうの芽が出て、みんな(皆保険)さむ(36)い日もびょういんへ」……健康保険法は大正11年に制定、国民皆保険は昭和36年4月。世界で最初の社会保険はドイツ。

ポテいい日(11)とさむい日(36)だね!