社会保険に関する一般常識 ・ 第1章 家族の支えから社会の支え合いへ ― 社会保険の出発点
1-2労働者年金保険から基礎年金の導入までの年金の歩み国民年金法・厚生年金保険法(沿革)
ポテ厚生年金って、最初から「厚生年金保険法」って名前だったんでしょ?
ロウ先生昭和16年にできたときは「労働者年金保険法」で、対象は男子の現業労働者だけでした。昭和19年に名前を改め、事務職や女子にも広げています。
ポテえっ、そうなの!?名前ごと着替えてたんだ。
ロウ先生年金も、時代に合わせて衣がえ……今のは忘れてください。
ポテ先生、ぼくのバンダナも年に一回は衣がえしてます!
年金制度は、はじめは一部の働く人だけのものでした。それが全国民に広がり、さらに長い高齢期を支えられるよう何度も手直しされてきました。試験では、出来事を古い順に並べる問題や、白書の文章の一部として出てきます。全部を丸暗記する必要はなく、流れの中の節目を押さえれば十分です。
第1期 働く人のための年金が生まれる(昭和10〜20年代)
- 最初に年金を備えたのは、海で働く人の船員保険法(昭和14年)でした。
- 陸上で働く人には、昭和16年に労働者年金保険法が作られ、昭和17年に動き出しました。対象は、一定の規模以上の事業所で働く男子の現業労働者に限られていました。
- 昭和19年、法律の名前が厚生年金保険法に変わり、事務の仕事をする人や女子も対象になりました。
- 昭和29年には厚生年金保険法が全面的に作り直され、老齢年金が定額部分と報酬比例部分を組み合わせた形になりました。
第2期 すべての国民が年金に入る(昭和30年代)
会社員以外の人、つまり農家や商店などの自営業者、ごく小さな事業所で働く人は、長いあいだ公的年金の外にいました。そこで昭和34年に国民年金法が作られます。
- 保険料を払わずに受け取れる福祉年金(無拠出制)が、昭和34年11月から先に始まりました。
- 保険料を払う拠出制の国民年金は、昭和36年4月から始まりました。これで、すべての国民がいずれかの公的年金に入る国民皆年金が実現しました。
第3期 給付を充実させ、しくみを一本化する(昭和40年代〜平成初め)
| 年 | 何が変わったか |
|---|---|
| 昭和40年改正(昭和41年施行) | 企業が国の厚生年金の一部を代わりに運用する厚生年金基金ができる |
| 昭和48年 | 物価の上昇に合わせて年金額を改める物価スライド制を取り入れる |
| 昭和60年改正(昭和61年4月施行) | 全国民に共通する基礎年金を導入。会社員などに扶養される配偶者のための第3号被保険者の制度ができる |
| 平成元年改正 | 完全自動物価スライド制にし、年金の支払いを年6回にする |
| 平成3年 | 20歳以上の学生も国民年金に強制加入。地域型の国民年金基金が設けられる |
| 平成9年 | 1人に1つの基礎年金番号を導入する |
第4期 少子高齢化に耐える形へ(平成10年代〜)
| 年 | 何が変わったか |
|---|---|
| 平成13年10月・平成14年4月 | 確定拠出年金法(平成13年10月)と確定給付企業年金法(平成14年4月)が施行される |
| 平成15年 | 厚生年金の保険料と年金額の計算に賞与も含める総報酬制を導入 |
| 平成16年改正 | 保険料の水準に上限を決めて固定し、給付の伸びをマクロ経済スライドで自動的に抑える方式へ。5年ごとの財政再計算に代えて財政検証を行う |
| 平成21年 | 基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げる。ねんきん定期便の送付が始まる |
| 平成22年 | 社会保険庁が廃止され、日本年金機構が発足 |
| 平成24年3月末 | 税制上の適格退職年金が廃止される |
| 平成26年 | 厚生年金基金を新しく作ることを禁止。遺族基礎年金が父子家庭にも支給されるようになる。産前産後休業期間の厚生年金保険料が免除になる |
| 平成27年10月 | 共済年金を厚生年金にまとめる被用者年金の一元化 |
| 平成29年8月 | 老齢年金を受けるのに必要な期間(受給資格期間)を25年から10年に短くする |
| 平成31年4月・令和元年10月 | 出産前後の自営業者など(第1号被保険者)も国民年金の保険料が免除に(平成31年4月から)。年金生活者支援給付金の支給開始(令和元年10月) |
| 令和4年 | 繰下げできる年齢の上限を75歳に、繰上げの減額率を1か月0.4%に。65歳以上で働く人の年金を毎年見直す在職定時改定を導入。短時間労働者への厚生年金の適用を従業員100人超の企業に広げる |
| 令和6年10月 | 短時間労働者への適用を従業員50人超の企業に広げる |
ポイント令和7年の年金制度改正法(令和7年法律第74号)で、在職老齢年金の支給停止の基準額の引上げ(令和8年4月)が行われました。短時間労働者の企業規模の要件を段階的になくすこと(令和9年10月から)、標準報酬月額の上限を段階的に引き上げること(令和9年9月から)は改正予定で、順に施行されます。
具体例で考える
昭和15年生まれの自営業のCさんの一生を、年表に重ねてみます。Cさんが10代の終わりだった昭和34年に国民年金法ができ、20歳を過ぎていたCさんは昭和36年4月から保険料を納め始めました。40代半ばだった昭和61年4月には基礎年金が導入され、Cさんが将来受け取る年金も基礎年金を土台にした形になりました。もし国民年金法がなければ、自営業のCさんには公的年金がなかったことになります。
ひっかけ注意労働者年金保険法は昭和16年に制定・昭和17年に実施で、厚生年金保険法への改称は昭和19年。基礎年金は「昭和60年に改正、昭和61年4月に施行」で、どちらの年を聞かれているかを読み分けます。被用者年金の一元化は平成27年10月、受給資格期間の10年への短縮は平成29年8月です。
暗記船員保険法=昭和14年/労働者年金保険法=昭和16年制定・17年実施/厚生年金保険法へ改称=昭和19年/国民皆年金=昭和36年4月/基礎年金=昭和61年4月/マクロ経済スライド=平成16年/一元化=平成27年10月/受給資格期間10年=平成29年8月。
覚え方「ひろ(16)い現場で生まれ、いく(19)年かして名を変え、さむ(36)い夜もみんな年金でぬくぬく」……労働者年金保険法は昭和16年制定、昭和19年に厚生年金保険法へ改称、昭和36年4月に国民皆年金。