健康保険法 ・ 第1章 健康保険のねらいと給付の全体地図
1-2高齢化に合わせて見直し続ける基本の考え方第2条
健康保険制度については、これが医療保険制度の基本をなすものであることにかんがみ、高齢化の進展、疾病構造の変化、社会経済情勢の変化等に対応し、その他の医療保険制度及び後期高齢者医療制度並びにこれらに密接に関連する制度と併せてその在り方に関して常に検討が加えられ、その結果に基づき、医療保険の運営の効率化、給付の内容及び費用の負担の適正化並びに国民が受ける医療の質の向上を総合的に図りつつ、実施されなければならない。
ペン社長いいこと思いついたぞ!制度の見直しなんて5年に1回やれば十分だろう。それまで誰も口を出すな!
ロウ先生第2条は「常に」検討すると書いています。何年ごと、という区切りは置いていません。
ポテ健康保険だけで考えればいいんですよね?
ロウ先生ほかの医療保険制度や後期高齢者医療制度とも併せて考える、というのが条文の言い方です。
ポテなるほど!散歩コースも、天気とおなかの空き具合を見て毎日決め直すのと同じだ!
第2条は、健康保険を「作ったら終わり」にしないための条文です。社会の変化に合わせて、ほかの制度と一緒に絶えず点検し、そのうえで運営しなさいと国に求めています。
条文を5つの部品に分ける
| 部品 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 前提 | 健康保険は医療保険制度の基本をなすもの |
| 何に対応するか | 3つの変化。高齢化が進むこと、疾病構造が変わること、そして社会や経済の情勢が変わることなど |
| 何と一緒に考えるか | その他の医療保険制度、後期高齢者医療制度、それらに密接に関連する制度 |
| どれくらいの頻度で | 常に検討する |
| 何をめざすか | 医療保険の運営の効率化、給付の内容と費用の負担の適正化、国民が受ける医療の質の向上を総合的に図る |
「疾病構造の変化」とは、感染症が中心だった時代から、生活習慣病や長く付き合う慢性の病気が中心の時代へ移ったような変化を指します。
年齢によって入る制度が変わる
第2条が「ほかの制度と併せて」と言うのは、日本の医療保険が年齢や働き方でいくつかに分かれているからです。
- 会社などに雇われて働く75歳未満の人は健康保険に入ります。自営業の人などは国民健康保険です。
- 75歳以上の人と、一定の障害がある65歳以上の人は後期高齢者医療制度に移ります。
- 介護保険とも重なります。医療保険に入っている40歳以上65歳未満の人は介護保険の第2号被保険者、65歳以上の人は第1号被保険者です。
具体例で考える
B社に勤める38歳のCさんは、健康保険の被保険者です。40歳になると、健康保険に入ったまま介護保険の第2号被保険者にもなります。65歳で第1号被保険者に変わり、仮に75歳まで働き続けたとしても、75歳になった時点で後期高齢者医療制度に移ります。1人の人生の中でも制度はつながっているので、どれか1つだけを見直すわけにはいかないのです。
見直しが実際に行われた例
第2条の考え方は、近年の改正にも表れています。
- 令和6年4月から、出産育児一時金の費用の一部を、後期高齢者医療制度の側からも支える出産育児交付金のしくみが始まりました(詳しくは13-4)。世代をまたいで費用を分け合う発想です。
- 令和9年3月から、市販薬と代わりになりやすい一部の薬などについて、費用の一部を保険給付の外に出す「一部保険外療養」のしくみが始まりました(詳しくは第5章)。
ポイント第2条は具体的な給付を定めた条文ではなく、制度を運営するときの姿勢を示した条文です。選択式では、空欄になりやすいキーワード(高齢化の進展・疾病構造の変化・常に・効率化・適正化・質の向上)を正確に覚えておきましょう。
ひっかけ注意検討は「常に」です。「5年ごとに」と書かれていたら誤りです。また、併せて検討する相手として条文が名前を挙げるのは「その他の医療保険制度」と「後期高齢者医療制度」です。「介護保険制度と併せて」と入れ替えた選択肢に注意しましょう。
暗記変化への対応(高齢化の進展・疾病構造の変化・社会経済情勢の変化等)→常に検討→効率化・適正化・医療の質の向上を総合的に。
覚え方「むだなく、ほどよく、質よく」……健康保険が見直しでめざす3つ。むだなく=医療保険の運営の効率化、ほどよく=給付の内容と費用の負担の適正化、質よく=国民が受ける医療の質の向上(第2条)。
- 医療保険の運営の効率化
- 給付の内容と費用の負担の適正化
- 国民が受ける医療の質の向上