雇用保険法 ・ 第1章 雇用保険の全体像
1-3給付と二事業の全体構成第3条
雇用保険は、第1条の目的を達成するため、失業等給付及び育児休業等給付を行うほか、雇用安定事業及び能力開発事業を行うことができる。
ポテ給付も助成金も、条件を満たせば「ちょうだい!」って請求できるんですよね?
ロウ先生給付は「行う」と言い切っています。一方、雇用安定事業と能力開発事業の二事業は「行うことができる」で、個人に請求する権利を与えるものではありません。
ポテえっ、そうなの!?語尾ひとつでそんなに違うんだ。
ロウ先生二事業の費用は、事業主だけが負担する保険料でまかないます。語尾は小さくても、中身は大違いです。
ポテなるほど!「行う」は定食に必ずつくごはん、「できる」はお店が企画するキャンペーンってことか〜。
第3条は、雇用保険が手がける仕事の一覧表です。働く人へ直接お金を渡す「給付」と、会社や社会全体に働きかける「事業」の2系統があります。
3つの柱
| 柱 | 何をするか | 中身 |
|---|---|---|
| 失業等給付 | 失業中や在職中の労働者の生活・雇用を安定させ、就職を後押しする | 4グループ。離職後に使う求職者給付と就職促進給付、在職中にも使う教育訓練給付と雇用継続給付(1-4) |
| 育児休業等給付 | 子を育てるために休業したり時短で働いたりする人の生活・雇用を安定させる | 休業中の育児休業給付(産後パパ育休向けの出生時育児休業給付金を含む)、両親で休業したときの出生後休業支援給付、時短勤務中の育児時短就業給付(第6章) |
| 雇用安定事業・能力開発事業(二事業) | 失業の予防、雇用状態の是正と雇用機会の増大、能力の開発と向上など | 事業主への助成金、職業訓練の支援など(第15章) |
「行う」と「行うことができる」
条文の語尾に注目してください。給付は「行う」と言い切っています。要件を満たした人には必ず支給する、という意味です。これに対して二事業は「行うことができる」です。政策として実施する事業であり、個人が「この助成金を出せ」と請求できる権利を与えるものではありません。
お金の出どころも違います。二事業の費用は、事業主だけが負担する保険料でまかなわれます(15-6)。給付の費用は、労使が折半する保険料と国庫負担が中心です。
育児の給付が別の柱になった経緯
- 育児休業給付は、もともと失業等給付の中の雇用継続給付の一つでした。
- 令和2年4月から、失業等給付とは切り離して独立の給付として扱われるようになりました。
- 令和7年4月1日、出生後休業支援給付と育児時短就業給付が新設され、育児休業給付とあわせて「育児休業等給付」という一つの柱になりました。
具体例で考える
従業員50人の家具メーカー「杉田木工」で、同じ年に次のことが起きたとします。製造部の村上さんが妻の出産にあわせて休業し、出生時育児休業給付金を受けました。退職した営業部の元社員は基本手当を受けています。会社自身は、景気の落ち込みで休業させた従業員の手当について、国の助成金(雇用調整助成金)を受けました。前の2つは個人への給付、最後の1つは二事業から会社への支援です。
暗記給付は2つ(失業等給付・育児休業等給付)、事業は2つ(雇用安定事業・能力開発事業)。事業のほうだけ「できる」規定で、保険料は事業主のみ負担。
覚え方「2+2の柱、事業だけ『できる』で社長もち」……給付は失業等給付と育児休業等給付の2つで「行う」。事業は雇用安定事業と能力開発事業の2つで「行うことができる」。二事業の保険料は事業主だけが負担する。育児休業等給付は失業等給付の一種ではない。
- 失業等給付
- 育児休業等給付(失業等給付の一種ではない)
- 雇用安定事業
- 能力開発事業
ひっかけ注意「育児休業給付は失業等給付の一種である」は、今の法律では誤りです。失業等給付は4種類で、育児の給付はその外にある別の柱です。なお、以前は雇用福祉事業を加えた「三事業」でしたが、雇用福祉事業は平成19年の改正で廃止され、今は二事業です。