労務管理その他の労働に関する一般常識 ・ 第1章 国が描く雇用の土台と職業選択の自由
1-3会社に求められる雇用管理の努力と国との連携労働施策総合推進法第6条〜第8条
第6条 事業主は、その雇用する労働者の労働時間の短縮その他の労働条件の改善その他の労働者が生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就業することができる環境の整備に努めなければならない。
2 事業主は、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者について、当該労働者が行う求職活動に対する援助その他の再就職の援助を行うことにより、その職業の安定を図るように努めなければならない。
第7条 事業主は、外国人(日本の国籍を有しない者をいい、厚生労働省令で定める者を除く。以下同じ。)が我が国の雇用慣行に関する知識及び求職活動に必要な雇用に関する情報を十分に有していないこと等にかんがみ、その雇用する外国人がその有する能力を有効に発揮できるよう、職業に適応することを容易にするための措置の実施その他の雇用管理の改善に努めるとともに、その雇用する外国人が解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)その他の厚生労働省令で定める理由により離職する場合において、当該外国人が再就職を希望するときは、求人の開拓その他当該外国人の再就職の援助に関し必要な措置を講ずるように努めなければならない。
第8条 厚生労働大臣は、前条に定める事項に関し、事業主が適切に対処するために必要な指針を定め、これを公表するものとする。
ペン社長いいこと思いついたぞ!外国人スタッフが辞めるなら、理由がなんでも次の仕事探しを全部会社で面倒みる約束をしよう!
ロウ先生気持ちはすてきですが、7条の再就職援助は努力義務です。しかも本人の責めに帰すべき理由による解雇は、対象から外れています。
ポテやってくれたら助かるけど、法律が求めてるのはそこまでじゃないんだ。
ロウ先生そうです。6条も7条も「努めなければならない」です。
ポテ社長の太っ腹、お腹のもふもふと同じくらい大きいね!
1-2の国の施策に対して、事業主の側に求められることを定めたのが6条と7条です。どちらも「努めなければならない」という形の努力義務で、違反しても罰則はありません。ただし、ここで示された方向は、後の章で学ぶ具体的な義務(再就職援助計画、外国人雇用状況の届出など)の土台になっています。
事業主の3つの責務
| 条文 | だれのために | 何をするよう努めるか |
|---|---|---|
| 6条1項 | 雇っている労働者全体 | 労働時間の短縮などの労働条件の改善をはじめ、生活との調和を保ちながら意欲と能力に応じて働ける環境の整備 |
| 6条2項 | 事業を縮めたり、やめたりするために会社を去ることになる人 | 本人が行う求職活動への援助など、再就職の援助 |
| 7条 | 雇っている外国人 | ①仕事になじみやすくするための工夫をはじめとする雇用管理の改善 ②解雇(本人の責めに帰すべき理由によるものを除く)など省令で定める理由で離職し、再就職を希望するときは、求人の開拓などの再就職の援助 |
7条が外国人を特に取り上げているのは、日本の雇用慣行や、仕事を探すのに必要な情報を十分に持っていないことが多いからです。条文の冒頭にその理由が書かれています。7条の「外国人」は日本の国籍を持たない人ですが、省令で定める人(特別永住者など)は除かれます。
8条では、厚生労働大臣が7条の事項について事業主が適切に対処するための指針を定めて公表します。これが「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(外国人雇用管理指針)です。
具体例で考える
食品加工のD社は、ベトナム出身のEさんを含む外国人10人を雇っています。作業手順書にやさしい日本語と図を入れ、安全教育を母語で受けられるようにするのは、7条の雇用管理の改善にあたります。その後、D社が工場の一つを閉じることになり、Eさんが日本での再就職を希望したとします。D社がハローワークと連携して求人を探すのは、7条後半の再就職援助です。一方で、Eさんが重大な規律違反で懲戒解雇された場合は、この再就職援助の努力義務の対象から外れます。
ひっかけ注意6条・7条はすべて努力義務です。「講じなければならない」「義務を負う」とした選択肢は誤りです。また、外国人の再就職援助が及ばないのは「自己の責めに帰すべき理由による解雇」で離職する場合です。指針を定めるのは厚生労働大臣(8条)で、事業主ではありません。
暗記事業主の責務(すべて努力義務):①生活との調和を保って働ける環境の整備(6条1項)②事業縮小等で離職する人の再就職援助(6条2項)③外国人の雇用管理の改善と、再就職援助(本人の責めによる解雇は除く)(7条)。大臣が外国人雇用管理指針を定めて公表(8条)。
覚え方「環境・再就職・外国人、会社の三つはトライでOK」……事業主の責務は、職場環境の整備、離職者の再就職援助、外国人の雇用管理改善と再就職援助の3つで、どれも努力義務(6条・7条)。
- 職場環境の整備(生活との調和)
- 事業縮小等で離職する人の再就職援助
- 外国人の雇用管理の改善と再就職援助
- 自己の責めに帰すべき理由による解雇で離職する外国人