労働基準法 ・ 第13章 寄宿舎・監督・書類・罰則
13-9違反したときの罰則第117条〜第121条
【117条】第5条の規定に違反した者は、1年以上10年以下の拘禁刑又は20万円以上300万円以下の罰金に処する。
【121条1項】この法律の違反行為をした者が、当該事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合においては、事業主に対しても各本条の罰金刑を科する。ただし、事業主(事業主が法人である場合においてはその代表者、事業主が営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者又は成年被後見人である場合においてはその法定代理人(法定代理人が法人であるときは、その代表者)を事業主とする。次項において同じ。)が違反の防止に必要な措置をした場合においては、この限りでない。
【121条2項】事業主が違反の計画を知りその防止に必要な措置を講じなかつた場合、違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかつた場合又は違反を教唆した場合においては、事業主も行為者として罰する。
ペン社長いいこと思いついたぞ!残業代の不払いは店長がやったことだから、会社は関係ないな!
ロウ先生121条の両罰規定で、事業主にも罰金刑が科されます。違反を防ぐ必要な措置をとっていた場合は罰せられません。
ポテ社長が知っていて放っておいたら?
ロウ先生違反を知りながら是正しなかった事業主は、行為者として罰せられます。
ペン社長……勤怠チェックの研修、明日からやるぞ!
労基法は、守らなければ刑罰が科される法律です。罰則があるからこそ、最低基準としての力を持ちます。罰則は重い順に4段階あり、どの違反がどの段階かで、法律がその違反をどれだけ重く見ているかがわかります。
なお、刑法の改正(令和7年6月1日施行)で「懲役」は「拘禁刑」に改められました。このテキストは拘禁刑で表記しています。
罰則の4段階
| 段階 | 罰則 | 代表的な違反 |
|---|---|---|
| 最も重い(117条) | 1年以上10年以下の拘禁刑、又は20万円以上300万円以下の罰金 | 強制労働(5条) |
| 重い(118条) | 1年以下の拘禁刑、又は50万円以下の罰金 | 中間搾取(6条)、最低年齢(56条)、年少者の坑内労働(63条)、女性の坑内労働(64条の2) |
| 中くらい(119条) | 6箇月以下の拘禁刑、又は30万円以下の罰金 | 下の一覧を参照 |
| 軽い(120条) | 30万円以下の罰金のみ | 下の一覧を参照 |
117条は、労基法で唯一、罰金に下限(20万円以上)がある規定です。人の自由を奪う強制労働を、それだけ重大に見ているということです。
119条にあたる主なもの
- 基本原則:均等待遇(3条)、男女同一賃金(4条)、公民権の行使(7条)
- 契約・解雇:16条(違約金などをあらかじめ決める)、17条(前借りした金を給料と相殺する)、18条1項(貯金を強いる)、19条(解雇が禁じられた期間の解雇)、20条(予告なしの解雇)
- 時間・休み:労働時間(32条)、休憩(34条)、休日(35条)、時間外・休日労働の上限(36条6項)、割増賃金(37条)、年次有給休暇(39条。7項を除く)
- 年少者・女性:年少者の深夜業(61条)、妊産婦等の危険有害業務(64条の3)、産前産後(65条)、妊産婦の時間外労働などの制限(66条)、育児時間(67条)
- 補償・寮・申告:療養補償から葬祭料まで(75条〜80条)、寮の役員選びへの干渉(94条2項)、寮の設備・安全衛生(96条)、申告を理由とする不利益取扱い(104条2項)
120条にあたる主なもの
- 契約:契約期間(14条)、労働条件の明示(15条1項・3項)、金品の返還(23条)
- お金の払い方:24条の支払5原則、25条の非常時の前払い、26条の会社都合で休ませたときの手当、27条の歩合給の人への保障
- 手続・届出:各種労使協定の届出、年休の時季指定義務(39条7項)、就業規則の作成・届出(89条)、意見聴取(90条1項)、制裁規定の制限(91条)、寄宿舎規則(95条1項・2項)、報告等(104条の2)
- 若い人・女性:57条(18歳未満の人の年齢証明書を事業場に備え付けない)、58条・59条(親や後見人が本人に代わって契約を結ぶ・給料を受け取る)、64条(解雇された年少者の帰りの旅費)、68条(生理日に休みを求めた人を働かせる)
- 書類まわり:106条から109条までの4つ(ルールを知らせる、名簿を作る、台帳を作る、書類をとっておく)
ひっかけ注意直感と逆になりやすいのが賃金関係です。通常の賃金の不払い(24条)や休業手当(26条)は120条の罰金だけですが、割増賃金(37条)や解雇予告(20条)は119条で拘禁刑もあります。年休も、与えなかった場合(39条)は119条、時季指定義務(39条7項)の違反は120条と分かれます。
両罰規定(121条):会社も罰せられる
労基法違反は、実際には部長や店長など現場の人が起こすことが多いものです。121条は、その場合に行為者だけでなく事業主(会社)にも罰金刑を科すとしています。
- 事業主に科されるのは、それぞれの条文の罰金刑です。拘禁刑は科されません。
- 事業主が違反を防ぐために必要な措置をとっていたなら、事業主は罰せられません。
- 事業主が違反の計画を知りながら止めなかった、違反を知りながら正さなかった、違反をそそのかした、という場合は、事業主自身が行為者として罰せられます。
具体例で考える
小売チェーンR社のS店長は、売上目標に追われて、アルバイトの残業代を払わずに長時間働かせていました。
- S店長は、割増賃金不払い(37条)の行為者として、6箇月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金の対象になります。
- R社にも、両罰規定で30万円以下の罰金が科される可能性があります。R社が勤怠のチェックや研修など、違反を防ぐ十分な措置をとっていたと認められれば、R社は罰せられません。
- R社の社長が実態を知りながら放置していたなら、社長本人も行為者として罰せられます。
暗記117条=強制労働、1年以上10年以下・20万円以上300万円以下(罰金に下限があるのはここだけ)。118条=中間搾取・最低年齢・坑内労働。両罰規定は事業主に「罰金刑」、防止措置をしていれば免責。
覚え方「いち(1)からじゅう(10)まで縛るなら、にじゅう(20)からさんびゃく(300)まで」……強制労働(5条)の罰則は、1年以上10年以下の拘禁刑又は20万円以上300万円以下の罰金(117条)。罰金に下限があるのはここだけ。両罰規定では事業主に各本条の罰金刑が科され、違反防止に必要な措置をしていれば免責(121条)。

ポテいちからじゅう、にじゅうからさんびゃく!