労働基準法 ・ 第1章 労基法の出発点 ― 目的と労働条件の基本ルール
1-2労使対等の決定と約束を守る義務第2条
1. 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。
2. 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。
ポテ就業規則を守る義務って、会社だけのものですよね?ぼくは寝坊しても関係なし!
ロウ先生いいえ。2条2項は、労働者と使用者の両方に、労働協約・就業規則・労働契約を守り、義務を誠実に果たすよう求めています。
ポテえっ、ぼくもなの!?じゃあ遅刻したら、2条違反で処罰されちゃう?
ロウ先生2条には罰則がありません。心構えを示した訓示的な規定です。
ポテほっ……。でも約束は守ります!庭に埋めた大事なほねと同じくらい大事にします!
第2条は「条件は話し合って対等に決め、決めたことはお互いに守る」という、労使関係の基本マナーを定めた条文です。
1項:なぜ「対等」とわざわざ書くのか
契約の理屈だけでいえば、会社も従業員も同じ一人の当事者です。けれども現実には、仕事を与える側と、仕事がなければ生活できない側とでは交渉力に大きな差があります。〔昭和63年基発150号〕は、この現実の力の差を埋めることが労基法の大切な視点だから、あえて対等決定の理念を掲げたのだと説明しています。同じ通達は、本条を労働条件の決め方と労使双方の義務についての一般原則を宣言したもの、と位置づけています。
2項:守るべき3つのルールブック
2項では、労働者と使用者の両方が、次の3つを守り、それぞれの義務を誠実に果たすよう求められています。
- 労働協約:労働組合と会社が交渉して合意した内容を書面にし、双方が署名または記名押印したもの。組合が存在しない職場では結ぶことができません。
- 就業規則:会社が定める職場のルール。たとえば残業を命じる根拠のように、労使の権利義務を生み出す民事上の効力があります。
- 労働契約:一人ひとりの労働者と会社との約束。
義務を負うのは会社だけではない、という点が2項の特徴です。
具体例で考える
B運送の就業規則には「始業は午前8時」とあります。ドライバーのCさんが連日遅刻する一方で、会社のほうも就業規則に書いた手当を払っていない、という状態だったとします。2項から見ると、Cさんも会社もそれぞれ約束を守っていないことになります。
ただし、2条には罰則が付いていません。1条と同じく、心構えを示した訓示的な規定だからです。ですから、この例で「2条違反として会社やCさんが処罰される」ことはありません(手当の不払いが別の条文に触れるかどうかは別問題です)。
まぎらわしい「労使協定」との違い
2項には出てきませんが、試験では「労働協約」と「労使協定」の取り違えがよく狙われます。名前は似ていても、根拠となる法律も効き目も違います。
| 労使協定 | 労働協約 | |
|---|---|---|
| どの法律の仕組みか | 労働基準法 | 労働組合法 |
| 会社の相手方 | 事業場の過半数で組織する労働組合。ない場合は過半数代表者 | 労働組合 |
| 主な効き目 | 法の原則と違う扱いをしても違反にならない(免罰的効力) | 労働条件を直接決める(規範的効力) |
| 誰に及ぶか | その事業場の全員 | 原則としてその組合の組合員 |
一つの書面が両方の性格をあわせ持つこともあります。労使協定が同時に労働協約にもあたるときは、その有効期間や解約の方法について労働組合法のルールが適用されると考えられています。
ポイント「協定」は労基法の例外を許す免罪符、「協約」は組合との約束ごと、と区別しておくと混乱しません。
ひっかけ注意「就業規則を守らなかった労働者には2条違反の罰則が科される」「使用者だけが遵守義務を負う」は、いずれも誤りです。2条に罰則はなく、遵守義務は労使の双方にあります。
暗記2条で守るもの=協約・就業規則・労働契約の3つ。1条・2条はどちらも罰則なし。
覚え方「今日(協約)も週(就業規則)明けも、契(契約)約は守ろう、おたがいに」……2条2項で労働者と使用者の双方が守るのは、労働協約・就業規則・労働契約の3つ。1項は労働条件を労使が対等の立場で決めるという原則。1条・2条はどちらも罰則なし。
- 組合と会社の合意を書面にしたもの
- 会社が定める職場のルール
- 一人ひとりと会社の約束