労働基準法 ・ 第1章 労基法の出発点 ― 目的と労働条件の基本ルール
1-3国籍・信条・社会的身分を理由とする差別の禁止第3条
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
ポテ女性だからって労働時間で差をつけたら、3条違反ですよね!
ロウ先生3条が挙げる理由は、国籍・信条・社会的身分の3つだけです。性別は入っていません。
ポテえっ、そうなの!?じゃあ、社長と同じ宗教の人だけ給料を上げるのは、得する話だからセーフ?
ロウ先生差別的取扱いには、有利に扱うことも含まれます。ひいきしたい心情はわかりますが、信条を理由に差をつけるのは禁止です。……今のは忘れてください。
ポテなるほど!おやつの大盛りでも、理由が国籍・信条・社会的身分ならアウト。まず「なんで大盛り?」を確かめるんですね!
第3条は、働く人の「生まれ」や「考え方」で待遇に差をつけることを禁じる条文です。憲法14条1項の法の下の平等を、職場の労働条件にあてはめたものといえます。条文の見出しは「均等待遇」です。
差別の理由は3つだけ
3条が挙げる理由は、国籍・信条・社会的身分の3つに限られます。「国・信・社」と覚えましょう。性別はこの中に入っていません。性別を理由とする賃金の差別は次の4条が扱い、賃金以外の場面での男女差別は男女雇用機会均等法の守備範囲になります。
ことばの確認
- 信条:信仰する宗教だけでなく、政治的な考え方も含みます。〔昭和22年発基17号、大阪地裁昭和44年12月26日判決〕は、抽象的な政治理念にとどまらず、具体的な政策の方向についての意見まで入るとしています。
- 社会的身分:生まれつきの事情で決まり、本人の力では抜け出せない、継続的な地位をいいます〔名古屋地裁昭和39年11月9日判決、宇都宮地裁昭和40年4月15日判決〕。正社員か臨時工かといった契約上の立場や、どの労働組合に入っているかは、社会的身分にあたりません。
- 差別的取扱い:不利に扱うことだけでなく、有利に扱うことも含みます。
- その他の労働条件:賃金・労働時間のほか、解雇、災害補償、安全衛生、寄宿舎に関する条件なども入ります〔昭和63年基発150号〕。
国籍による差別の禁止は、主に日本人と外国人の扱いの違いを想定したものですが、無国籍の人や二つの国籍を持つ人も保護の対象です。
行政解釈と裁判例
試験で最も有名なのが三菱樹脂事件〔最高裁昭和48年12月12日判決〕です。最高裁は、雇い入れること自体は3条のいう「労働条件」に含まれないと判断しました。そのため、応募者の思想や信条を理由に採用しなかったとしても、3条違反にはなりません。
もう一つ押さえたいのが、思想そのものと、思想にもとづく行動との区別です。ある考え方を持っていることを理由に待遇を下げれば3条違反です。しかし、その考え方にしたがって起こした行動が会社の秩序を大きく乱した場合に、その秩序を乱した行為を理由として不利に扱うことは、3条違反にはなりません。
具体例で考える
- 食品工場のD社が、外国籍の従業員だけ夜勤手当を低く設定した。→ 国籍を理由とする賃金の差別で、3条違反です。
- 同じD社が、特定の宗教の信者であることを理由に、その従業員だけ昇給を止めた。→ 信条による差別で、3条違反です。
- D社が、パート社員の時給を正社員の時給換算より低くしている。→ 雇用形態は社会的身分ではないので、3条の問題にはなりません。
- D社が、面接で政治的な考え方を聞いたうえで不採用にした。→ 採用は3条の対象外なので、3条違反にはなりません。
ポイント3条を読むときは「理由は何か」「場面は雇った後か」の二段で確かめます。理由が国・信・社のどれかで、しかも雇入れ後の待遇の話であれば、3条の出番です。
ひっかけ注意「性別を理由とする労働時間の差別は3条違反」は誤りです。3条の理由に性別はありません。また「有利な扱いなら差別にあたらない」という記述も誤りです。
暗記国・信・社。信条=宗教+政治。社会的身分=生来の地位(雇用形態は×)。採用=対象外(三菱樹脂事件)。
覚え方「国産の新車(国・信・社)に、性別の席はなし」……3条の差別禁止の理由は国籍・信条・社会的身分の3つだけで、性別は入らない(性別を理由とする賃金差別は4条)。有利な扱いも差別的取扱いに含まれる。採用は3条の対象外(三菱樹脂事件)。
- 国籍
- 信条(宗教+政治的な考え方)
- 社会的身分(生まれつきの地位)
- 性別(賃金の差別は4条)
- 正社員・臨時工などの契約上の立場
- 採用するかどうか(三菱樹脂事件)

ポテ国産の新車で覚えます!