労働基準法 ・ 第1章 労基法の出発点 ― 目的と労働条件の基本ルール
1-7選挙権など公民としての権利の行使第7条
使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。
ポテ裁判員に選ばれた日も仕事なんですけど、抜ける時間の給料も出るんですよね?
ロウ先生時間を与える義務と、その時間の賃金を払う義務は別ものです。有給か無給かは、労働協約などの当事者の合意で決まります。
ポテえっ、そうなの!?じゃあ店長が「特売日だから無理」って断ったら?
ロウ先生拒めば7条違反です。投票などに支障がなければ時刻の変更はできますが、拒否はできません。
ポテなるほど!おやつの時間をずらすのはOK、おやつ抜きはダメ、と同じですね!
第7条は、仕事中であっても、投票に行くことや裁判員を務めることなど、市民としての役目を果たす時間を確保するための条文です。見出しは「公民権行使の保障」です。
使用者ができること・できないこと
| 使用者の対応 | 可否 | 説明 |
|---|---|---|
| 請求を拒む | × | 拒んだ時点で違反。6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 時刻や日を変える | ○ | 権利の行使や職務の執行に支障がない範囲であれば可能〔昭和23年基発1575号〕 |
| その時間を無給にする | ○ | 有給か無給かは労働協約や労使協定など当事者の合意で決める〔昭和22年基発399号〕 |
| 「公民権は勤務時間外に行使すること」と就業規則で定め、請求を断る | × | 違法〔昭和23年基発1575号〕 |
時間を与える義務と、その時間の賃金を払う義務は別ものです。働かなかった時間に賃金を払わないこと自体は、7条違反ではありません。
具体例で考える
スーパーで働くKさんが裁判員に選ばれ、「来週火曜の午前中に裁判所へ行くため時間がほしい」と店長に申し出ました。店長が「火曜は特売日だから無理だ」と断れば7条違反です。ただし、裁判所に出向く日時そのものは動かせないので、この例では時刻を変更する余地もありません。
一方、期日前投票のように投票日時をある程度選べる場合であれば、「午前は忙しいので、午後に行ってもらえますか」と時間帯をずらすことは認められます。投票自体に支障がないからです。
「公民としての権利」「公の職務」にあたるか
公民としての権利とは、国や地方公共団体の公務に参加する権利をいいます。何が含まれるかは〔昭和63年基発150号〕が整理しています。
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 公民としての権利(○) | 公職の選挙権・被選挙権、最高裁判所裁判官の国民審査、特別法の住民投票、憲法改正の国民投票、地方自治法にもとづく直接請求、行政事件訴訟法5条の民衆訴訟、選挙人名簿の登録の申出 など |
| 公の職務(○) | 衆議院議員などの議員、労働委員会の委員、陪審員、検察審査員、労働審判員、裁判員、法令にもとづく審議会の委員の職務/民事訴訟法・刑事訴訟法による証人、労働委員会の証人の職務/公職選挙法の選挙立会人の職務 など |
| あたらない(×) | 個人的な事情で裁判を起こすなど個人としての訴権の行使、行政不服審査法上の無効等確認の訴え、他人の選挙運動の応援、予備自衛官の防衛招集・訓練招集、非常勤の消防団員の職務 |
ポイント分かれ目は「公のための参加か、自分のための行動か」です。自分の権利を守るための訴訟や、他人の選挙の手伝いは、公務への参加ではないので7条の外になります。
裁判例:十和田観光電鉄事件
〔最高裁昭和38年6月21日判決〕では、会社の承認なしに公職に就いた従業員を懲戒解雇にするという就業規則の定めが問題になりました。最高裁は、こうした定めは7条の趣旨に反して無効だとしました。公職に就くことで会社の業務に大きな支障が出るおそれがあるとしても、普通解雇を検討する余地はともかく、この条項を使って懲戒解雇することは許されないとしています。
ひっかけ注意「時刻の変更もできない」「公民権を行使した時間にも賃金を支払わなければならない」は、いずれも誤りです。変更はできますが、拒否はできません。また、非常勤の消防団員や予備自衛官の招集は対象外である点もよく出ます。
暗記拒否=×、変更=○、賃金=合意しだい。罰則は6か月以下の拘禁刑/30万円以下の罰金。
覚え方「ろく(6)でもない拒否は、さんざん(30)な罰」……7条の請求は拒めない(拒めば6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)。権利の行使や公の職務の執行に妨げがなければ、請求された時刻の変更はできる。その時間を有給にするか無給にするかは当事者の合意しだい。
- ×請求を拒む(6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)
- ○請求された時刻を変える(行使に妨げがなければ)
- ○その時間を無給にする(有給か無給かは当事者の合意)
- ×「勤務時間外に行使すること」と就業規則で定めて断る

ポテおやつの時間ずらしはOK、おやつ抜きはダメ!