労働基準法 ・ 第2章 誰に・どこに適用されるか ― 適用範囲と基本用語
2-1労基法が適用される事業(別表第1)別表第1
別表第1(第33条、第40条、第41条、第56条、第61条関係)
1 物の製造、改造、加工、修理、洗浄、選別、包装、装飾、仕上げ、販売のためにする仕立て、破壊若しくは解体又は材料の変造の事業(電気、ガス又は各種動力の発生、変更若しくは伝導の事業及び水道の事業を含む。)
2 鉱業、石切り業その他土石又は鉱物採取の事業
3 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
4 道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業
5 ドック、船舶、岸壁、波止場、停車場又は倉庫における貨物の取扱いの事業
6 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
7 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業
8 物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業
9 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内又は広告の事業
10 映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業
11 郵便、信書便又は電気通信の事業
12 教育、研究又は調査の事業
13 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
14 旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業
15 焼却、清掃又はと畜場の事業
ポテ別表第1に15業種が並んでるってことは、載ってない仕事には労基法はかからないんですね!
ロウ先生いいえ。人を雇って仕事をしていれば、業種を問わずほぼすべてが対象です。別表第1は、業種ごとに扱いを変える条文のための区分表です。
ポテえっ、そうなの!?じゃあ農林業は全部、労働時間の規定が外れるんでしたっけ?
ロウ先生41条で外れるのは農業・畜産・養蚕・水産です。林業は外れないので、木をつけてください。……今のは忘れてください。
ポテ先生のダジャレ、庭に埋めて大事にとっておきます!
この節で考えるのは「労基法はどんな職場に届くのか」という入口の問題です。答えは単純で、人を雇って仕事をしている場所なら、業種を問わずほぼすべてが対象になります。
もうけを目的にしているかどうかも関係ありません。NPO法人の事務局、福祉施設、お寺や教会であっても、人を雇っていれば労基法の対象です。例外として外されている人や事業は、次の節(2-2)でまとめて扱います。
別表第1は何のためにあるのか
別表第1には15の業種が並んでいます。これを「この15業種だけが対象」と読むのは誤りです。この表の役割は、業種ごとに扱いを変えている条文のために、業種の区分を示しておくことにあります。
見出しのかっこ書きにある条文が、その使い道です。主なものを表にまとめます。
| 別表の号 | 関係する主なルール |
|---|---|
| 6号(林業を除く)・7号 | 農業・畜産・養蚕・水産は、労働時間・休憩・休日の規定が外れる(第41条第1号) |
| 8号・10号(映画の製作を除く)・13号・14号 | 常時10人未満の規模なら、週の法定労働時間を44時間とする特例の対象(第40条) |
| 掲げる事業以外の官公署 | 公務のため臨時の必要があれば、国や自治体の職員に時間外・休日労働をさせられる(第33条第3項) |
| 1〜5号以外 | 工業的でない事業では、満13歳以上の児童を許可を得て使える(第56条第2項) |
| 6号・7号・13号 | 年少者の深夜業の禁止が外れる(第61条第4項) |
ひっかけ注意第41条で時間の規定が外れるのは農業・畜産・養蚕・水産です。6号の中でも林業は外れません。「農林業はすべて労働時間の規定が適用されない」という記述は誤りです。
「一つの事業」をどう数えるか
労基法は会社単位ではなく、事業場ごとに当てはめます。就業規則の届出や36協定も、原則として事業場ごとです。では、どこからどこまでを一つと数えるのでしょうか。
物差しになるのは「場所」です。根拠は運用方針を示した通達です〔昭和22年発基17号ほか、昭和63年基発150号でも確認〕。工場・店舗・事務所など、一定の場所でまとまって継続的に営まれている仕事の単位が一つの事業です。会社全体を一つとみるわけではありません。
- 同じ場所にある部署は、原則としてまとめて一つの事業です。
- 離れた場所にある本社と支店は、原則として別々の事業です。
- 同じ構内でも、働き方がまるで違い、本体と切り分けたほうが法を運用しやすい部門は、独立した事業として扱います。工場の中にある診療所や食堂がその例です。
- 反対に、場所が離れていても、ごく小さく独立性に乏しい出張所などは、すぐ上の組織とまとめて一つの事業とみます。新聞社の通信部がその例です。
- 一人ひとりの担当業務ごとに事業を分けることはできません。
具体例で考える
上の図のみどり食品は、福岡に本社、熊本に工場を持っています。工場の敷地には社員向けの診療所があり、医師と看護師が勤めています。大分には社員1人だけの連絡所があります。
工場の製造ラインと工場事務は同じ場所なので一つの事業です。診療所は同じ敷地内でも、医療という全く違う働き方なので別の事業として扱えます。本社は場所が違うので別の事業です。大分の連絡所は規模が小さく独立性がないため、本社に含めて数えます。
外国との関係
労基法は日本の法律なので、日本の国内にある事業に適用されます〔昭和43年基収4194号〕。
- 国内の事業であれば、働く人が外国籍でも、経営者が外国の会社でも適用されます。
- 日本企業の海外支店など、国外の事業には適用されません。
届出の窓口についての扱い
同じ会社が一つの労働基準監督署の管轄内に複数の事業場を持っている場合があります。このときは、各事業場の長より上位の使用者が、まとめて報告や届出をしてもかまわないとされています〔平成7年基発740号〕。事業の単位が変わるわけではない点に注意してください。
ポイント「適用されるかどうか」は、ほぼ全業種が対象と覚えて構いません。試験で問われるのは、事業の数え方(場所で判断・例外2つ)と、別表の号を使った個別ルール(41条・40条)の組み合わせです。
暗記事業の単位=場所で区切る。同じ場所でも独立=工場内の診療所・食堂。離れていても一括=新聞社の通信部。国外の支店=適用なし。
覚え方「お店(商業)・興行・病院(保健衛生)・旅館(接客娯楽)、小さな職場は週44時間」……物品販売・理容などの商業、映画の製作を除く興行、保健衛生、旅館・飲食店などの接客娯楽の事業で、常時10人未満なら週の法定労働時間を44時間とする特例の対象(40条)。労働時間・休憩・休日の規定が外れる(41条1号)のは、林業を除く農業と、畜産・養蚕・水産の事業。
- 商業(物品販売・理容など)
- 興行(映画の製作を除く)
- 保健衛生(病院など)
- 接客娯楽(旅館・飲食店など)
- 農業(林業を除く)
- 畜産・養蚕・水産
- 林業