労働基準法 ・ 第10章 年少者と妊産婦等の保護
10-10産前6週間・産後8週間の休業第65条
① 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
② 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
③ 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。
ポテ産後8週間の休みも、本人が「休みます」と言った人だけなんですよね?
ロウ先生請求が条件なのは産前です。産後8週間は、請求がなくても就業させてはいけません。
ポテ早く職場に戻りたい人はどうするんですか?
ロウ先生産後6週間を過ぎてから本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務なら就かせられます。
ポテなるほど!産前は「休むか選べるメニュー」、産後は「必ず休むセット」なんですね!
出産の前後に、母体を休ませる期間を保障するルールです。出産前は「本人が望めば休める」、出産後は「本人が望んでも原則として働かせてはいけない」という、性格の違う2つの休業が組み合わさっています。あわせて、妊娠中の軽い仕事への切替えも定めています。
出産前と出産後の違い
| 産前(1項) | 産後(2項) | |
|---|---|---|
| 期間 | 出産予定日の6週間前から(双子以上は14週間前から) | 出産の翌日から8週間 |
| 本人の請求 | 請求したときだけ休業 | 請求がなくても就業禁止(強制的な休業) |
| 例外 | 請求しなければ働き続けられる | 6週間を過ぎたあと、本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務なら働かせてよい |
具体例で考える
商社勤務のIさん(単胎)の出産予定日は6月30日です。
- 5月20日以降(予定日当日を含めて6週間=42日の範囲)に「休みます」と請求すれば、会社は休ませなければなりません。Iさんが請求せずに働き続けても、会社の違反にはなりません。
- 実際の出産が7月5日にずれ込んだ場合、6月30日から7月5日までの数日も産前の休業として扱われます。
- 産後は7月6日から8週間が就業禁止です。6週間が過ぎた時点でIさんが「事務の仕事なら戻りたい」と請求し、医師が支障なしと認めれば、その業務に限って復帰できます。
妊娠中の軽易業務への転換(3項)
妊娠中の女性から請求があれば、会社は負担の軽い仕事に移さなければなりません。ただし、会社にもともと存在しない軽い仕事を、わざわざ新しく作って与えるところまでは求められていません〔昭和61年基発151号・婦発69号〕。
行政解釈と裁判例
- 〔昭和23年基発1885号〕ここでいう「出産」は、妊娠4か月以上の分娩を指します。生きて生まれた場合に限らず、流産・死産・人工妊娠中絶も含まれます。1か月を28日で数えるので、「4か月以上」は28日×3+1で85日以上となります。
- 〔昭和25年基収4057号〕出産の当日は産前の期間に入ります。予定日より遅れて生まれたときの、予定日から出産日までの期間も産前に含まれます。
- 〔昭和25年基収1526号〕産前の期間に入っていても、本人が休業を請求せず働いている場合は、第19条の解雇制限の期間にはあたりません。私傷病で長く欠勤している女性が産前の期間に入ったものの休業請求の意思を全く示していない場合も同じです。ただし、どちらの場合もその間に解雇しないよう行政指導が行われます。
- 〔東朋学園事件・最高裁平成15年12月4日判決〕産前産後休業や、育児・介護休業法による勤務時間短縮で働かなかった期間を出勤扱いにするかどうかは、原則として労使の取決めにまかされます。もっとも、賞与を「出勤率90%以上」で支給する条件のもとで、これらの不就労を欠勤として出勤率を計算すると、権利の行使を抑え込み、法が権利を保障した意味を実質的に失わせることになるときは、その条項は公序に反して無効とされました。
なお、休業中の賃金について第65条は何も定めていません。有給にするか無給にするかは労使の決め方しだいです。
ポイント妊娠4か月(85日)以後に人工妊娠中絶をした場合も「出産」にあたるため、その後8週間は産後休業の対象になります。一方、この場合は出産予定日というものがないので、産前休業の話は出てきません。
ひっかけ注意「6週間以内に出産予定の女性を就業させてはならない」とだけ書かれた選択肢は誤りです。産前は請求が前提です。逆に「産後8週間は本人の請求がなければ就業させてはならない」も誤りで、産後は請求と関係なく禁止です。産後6週間経過後の復帰には「本人の請求」と「医師が支障なしと認めた業務」の2つがそろう必要があります。
暗記「前は頼めば休み(6週・多胎14週)、後は問答無用で休み(8週)、6週過ぎたら本人+医師で復帰可」。出産は85日以上の分娩で、流産・死産・中絶も含む。出産当日は産前。
覚え方「ロク(6)は頼めば休み、ハチ(8)は問答無用」……産前は出産予定日の6週間(多胎妊娠は14週間)以内で、本人が請求したら就業させない(65条1項)。産後8週間は請求がなくても就業禁止。ただし産後6週間を過ぎ、本人が請求して医師が支障ないと認めた業務なら可(同条2項)。妊娠中の女性が請求すれば軽易な業務に転換させる(同条3項)。

ロウ先生ロクは頼めば休み、ハチは問答無用です。