労働基準法 ・ 第11章 技能者の養成と災害補償
11-1徒弟の弊害の排除と職業訓練の特例第69条〜第73条
【69条】① 使用者は、徒弟、見習、養成工その他名称の如何を問わず、技能の習得を目的とする者であることを理由として、労働者を酷使してはならない。
② 使用者は、技能の習得を目的とする労働者を家事その他技能の習得に関係のない作業に従事させてはならない。
【70条】職業能力開発促進法(略)第24条第1項(略)の認定を受けて行う職業訓練を受ける労働者について必要がある場合においては、その必要の限度で、第14条第1項の契約期間、第62条及び第64条の3の年少者及び妊産婦等の危険有害業務の就業制限、第63条の年少者の坑内労働の禁止並びに第64条の2の妊産婦等の坑内業務の就業制限に関する規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる。
ペン社長いいこと思いついたぞ!見習いくんは修業中だから、わしの家の庭掃除もやってもらおう!
ロウ先生69条で、技能を身につけるために働く人に、家事など技能と関係のない作業をさせることは禁止です。修業中を理由に酷使することもできません。
ポテ呼び名を「研修生」に変えたらどうですか?
ロウ先生呼び名は問いません。技能の習得が目的なら対象です。
ポテなるほど!お皿の名前を変えても、中身のおかずは同じなんですね!
この節は二つの話でできています。一つは「修業」を口実にした搾取を許さないルール(69条)。もう一つは、きちんと認められた職業訓練なら、一部の保護規定をゆるめてもよいという特例(70条〜73条)です。
修業を口実にした酷使の禁止(69条)
昔の職人の世界では、親方のもとに住み込む弟子が珍しくありませんでした。「仕事を教えてやっている」という理屈で、給料はわずか、労働時間は際限なし、おまけに親方の家の雑用まで、ということが起こりがちでした。69条はこれを断ち切るための規定です。
- 対象は呼び名で決まりません。徒弟・見習・養成工・研修生など、技能を身につける目的で働いていれば当たります。
- 禁止されることは二つです。①技能習得中だからという理由で酷使すること、②家事など技能と無関係な作業をさせること。
具体例で考える
和菓子店「さくら堂」に、職人見習いのBさんが入りました。店主が「修業中だから」とBさんだけ毎日夜11時まで残らせる。これは①の酷使にあたります。店主の自宅の庭掃除や子どもの送り迎えをBさんにさせる。これは②の「技能と関係のない作業」にあたり、やはり許されません。
暗記69条は「呼び名は問わない」「酷使しない」「家事など無関係な作業をさせない」の3語でまとめておくと思い出しやすくなります。
覚え方「訓練の特例は労働局長のハンコから。坑内はイチロク(16)以上の男子だけ」……認定職業訓練の特例は、都道府県労働局長の許可を受けた使用者だけが使える(71条)。違反すれば局長は許可を取り消せる(73条)。危険有害業務は満18歳未満の訓練生、坑内労働は満16歳以上の男性の訓練生を、技能習得に必要な限度で就かせられる(労基則34条の3)。契約期間は訓練期間の範囲で3年を超えてもよい。
- 満18歳未満の訓練生
- 技能習得に必要な限度で就かせてよい
- 満16歳以上の男性の訓練生だけ
- 技能習得に必要な限度で就かせてよい
- 15歳や女性の訓練生には使えない

ロウ先生まずは局長のハンコからです。
認定職業訓練の特例(70条)
技能を本格的に育てるには、ふつうの労働者より長い契約期間や、危険をともなう実習が必要になる場面があります。そこで70条は、厚生労働省令で別の定めを置けるようにしました。使えるのは、職業能力開発促進法24条1項に基づき都道府県知事の認定を受けた職業訓練を受ける労働者だけです。しかも「必要の限度」でしか認められません。
| ゆるめられる規定 | 本来のルール | 訓練生についての特例(労基則) |
|---|---|---|
| 契約期間(14条) | 有期契約は原則3年まで(一定の場合5年) | 訓練期間の範囲内なら3年を超える期間を定めてよい(34条の2の5) |
| 危険有害業務(62条・64条の3) | 年少者や妊産婦等を危険有害業務に就かせない | 技能習得に必要な限度で、満18歳未満の訓練生を就かせてよい(34条の3第1項) |
| 坑内労働(63条・64条の2) | 年少者の坑内労働は禁止、女性も一定の坑内業務は制限 | 技能習得に必要な限度で、満16歳以上の男性の訓練生を就かせてよい(34条の3第1項) |
許可と取消し(71条・73条)
- 省令の特例は、自動的には使えません。訓練生を使う使用者が、都道府県労働局長の許可を受けてはじめて適用されます(71条)。
- 許可を得た使用者が条件に違反したとき、たとえば認められた範囲を超えて危険有害業務をさせたときは、都道府県労働局長は許可を取り消せます(73条)。
たとえば、訓練校の認定を受けた電気工事会社が16歳の男性訓練生に坑内での実習をさせたい場合を考えます。会社はまず労働局長の許可を取り、そのうえで技能習得に必要な範囲にとどめなければなりません。15歳の訓練生や女性の訓練生には、この坑内の特例は使えません。
ひっかけ注意許可を出すのは「都道府県労働局長」です。「所轄労働基準監督署長の許可」とする選択肢は誤りです。また坑内労働の特例が使えるのは「満16歳以上・男性」の訓練生に限られ、危険有害業務の「満18歳未満」と年齢の切り方が違う点も問われます。