労働基準法 ・ 第12章 就業規則 ― 職場のルールブック
12-1作成・届出が必要になる事業場第89条
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
ポテうちは8人ずつの工場が2つで、合わせて16人。就業規則を作らなきゃダメですよね?
ロウ先生数えるのは会社全体ではなく事業場ごとです。それぞれ独立した事業場なら、作成義務はありません。
ポテじゃあパートさんは0.5人で数えていいですか?
ロウ先生短時間の人も1人として数えます。換算のルールはありません。
ポテなるほど!ミニおにぎりでも、1個は1個なんですね!
何十人もの社員と、勤務時間や給料の決め方を一人ずつ契約書で細かく決めるのは現実的ではありません。そこで職場共通のルールブックとして就業規則があります。働くときに守る規律と、労働条件の具体的な中身をまとめた規則の総称です。89条は、一定規模以上の職場にその作成と届出を義務づけています。
就業規則はなぜ労働者を縛るのか
就業規則は会社が作るものです。それなのに、なぜ労働者がそれに従う必要があるのでしょうか。学説には法規範説・事実規範説・契約説などがありますが、試験で大切なのは判例の結論です。内容が周知されていれば、個々の労働者が中身を知っていたかどうかに関係なく拘束される、というのが結論です。
行政解釈と裁判例
- 〔秋北バス事件・最高裁昭和43年12月25日大法廷判決〕合理的な労働条件を定めた就業規則には法的な規範としての性質が認められます。その事業場の労働者は、内容を実際に知っていたか、個別に同意したかを問わず、就業規則の適用を受けます。
- 〔フジ興産事件・最高裁平成15年10月10日判決〕懲戒処分をするには、懲戒の種類と理由を前もって就業規則に定めておかなければなりません。さらに、就業規則が拘束力をもつには、適用される労働者に内容を周知する手続がとられていることが必要です。
- 〔日本シェーリング事件・最高裁平成元年12月14日判決〕出勤率の低い人に経済的な利益を与えない制度そのものには、一応の合理性があります。しかし、年休や産休など労基法上の権利で休んだ日まで欠勤扱いにして「稼働率80%以下は賃上げなし」とする労働協約条項は、権利の行使を抑え込み、法が権利を保障した意味を実質的に失わせる場合には、公序に反して無効になります。
「常時10人以上」の数え方
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 「常時」の意味 | ふだんの状態で10人以上いること。一時的に10人を切っても該当する。逆に、普段7人で繁忙期だけ4〜5人増える職場は該当しない |
| パート・アルバイト | 全員1人として数える。短時間だから0.5人、という換算ルールはない |
| 数える単位 | 会社全体ではなく事業場ごと。8人の工場が2つあっても、それぞれ独立した事業場なら作成義務なし |
| 派遣労働者 | 派遣元の事業場の人数に入れる。派遣中の人とそれ以外の人を合わせて常時10人以上なら、派遣元に作成・届出義務〔昭和61年基発333号〕 |
10人未満の事業場には作成義務がありません。ただ、ルールを文書にしておくことは望ましいとされています。任意に作った就業規則でも、効力は10人以上の事業場のものと同じです(労働契約法12条も適用されます)。
具体例で考える
雑貨チェーンの「ミナト商店」は、駅前店に正社員4人とアルバイト7人、郊外店に正社員3人とアルバイト5人がいます。駅前店は合計11人なので、作成・届出の義務があります。郊外店は8人なので、独立した事業場であれば義務はありません。会社全体で19人いることは関係ありません。
ひっかけ注意「2つの工場を合わせると10人以上なので作成義務がある」「週20時間未満の人は0.5人として数える」。どちらもよく出る誤りの選択肢です。判断は事業場単位、パートも1人です。
「作成した」といえるための条件
- 法律が求める記載事項がすべてそろって、はじめて「作成した」ことになります。絶対的必要記載事項でも、その事業場で当然に適用される相対的必要記載事項でも、欠けていれば作成義務を果たしていません〔昭和25年基収276号〕。
- 89条の事項を一人ひとりの労働契約書に全部書き込んでも、就業規則を作ったことにはなりません〔同〕。
- 記載事項の一部が抜けた就業規則でも、法令・労働協約に反しない、周知されているなどの要件を満たせば、就業規則としては有効です。ただし89条違反にはなります〔同〕。
- 就業規則は事業場の労働者全員について必要です。正社員の分だけ作り、パートの分がない状態は89条違反です〔昭和63年基発150号〕。
パート用など別建ての規則
一部の労働者だけ労働条件が違う場合、その人たちだけに適用する別の規則を作ってもかまいません。ただし法律上は、本体の規則と別の規則を合わせたものが1つの就業規則として扱われます。別の規則が単独で89条の就業規則になるわけではありません。そのため90条の意見聴取も、全体を一体とした就業規則について行います。本体の規則には、別規則の対象者について適用を除外する規定や、別規則に委ねる規定を置くのが望ましいとされています〔昭和63年基発150号〕。
ひっかけ注意パート用の規則だけを変える場合でも、意見を聴く相手は「パートの過半数代表」ではありません。事業場全体の労働者の過半数で組織する労働組合、それがなければ全体の過半数代表者です。パートだけの代表から意見を聴いても、90条の手続を踏んだことになりません。
届出の先と方法
提出先は、その事業場を管轄する労働基準監督署長です。作ったり変えたりしたら、遅れずに出す必要があります(労基則49条1項)。正当な理由なく届け出なければ、30万円以下の罰金の対象です(120条1号)。
支店が多い会社のために、本社でまとめて届け出る方法も認められています〔平成15年基発0215001号〕。同じ内容の就業規則を各事業場に適用する場合、本社の使用者が本社を管轄する署長にまとめて届け出れば、次の条件を満たす限り、他の事業場の分も届出があったものとして扱われます。
- 本社を含めた事業場の数だけ、就業規則を提出すること
- 各事業場の名称・所在地・所轄署長名と、本社の規則と各事業場の規則が89条各号の事項について同じ内容である旨を書き添えること
- 90条2項の意見書は、正本を各事業場の規則にそれぞれ添付すること
ポイント89条が書くよう求めていない事項でも、就業規則に書いてあれば軽く扱われるわけではありません。合理的な内容で周知されていれば労働契約の内容になり(労働契約法7条)、それを下回る個別の契約部分は無効になります(同法12条)。「任意に書いた事項には最低基準としての効力がない」という選択肢は誤りです。
暗記作成義務は「常時10人以上・事業場ごと・パートも1人・派遣は派遣元」。届出は遅滞なく監督署長へ。記載漏れがあっても規則は有効、ただし89条違反。
覚え方「ジュウ(10)人で一冊、数えるのは店ごと、パートもひとり」……常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出る。変更したときも同じ(89条)。人数は事業場ごとに数え、パート・アルバイトも1人。派遣労働者は派遣元の人数に入れる。
- ○常時10人以上なら作成し、監督署長に届け出る(変更時も)
- ○人数は事業場ごとに数える
- ×2つの工場を合わせて10人以上なら作成義務がある
- ○パート・アルバイトも1人と数える
- ×短時間の人は0.5人と数える
- ○派遣労働者は派遣元の人数に入れる

ポテミニおにぎりでも1個は1個!