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労働基準法 ・ 第12章 就業規則 ― 職場のルールブック

12-4法令・労働協約・労働契約との優先関係第92条・第93条

【92条】① 就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。
② 行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。
【93条】労働契約と就業規則との関係については、労働契約法(平成19年法律第128号)第12条の定めるところによる。
【労働契約法12条】就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

ポテ雇用契約書に就業規則より悪い条件があったら、契約まるごと無効になっちゃうんですか?

ロウ先生無効になるのは、就業規則の基準に届かない部分だけです。その部分は就業規則の基準に置き換わります。

ポテ監督署が変更を命じたら、その瞬間に規則も書き換わるんですよね?

ロウ先生いいえ。使用者が実際に変更の手続をして、はじめて変わります。意見聴取と届出も必要です。

ポテなるほど!「作り直してね」と言われただけでは、ケーキは勝手に焼き上がらないんですね!

職場の労働条件を決めるルールは、法令・労働協約・就業規則・労働契約と何層にもなっています。ぶつかったときにどれが勝つのか。その順番を決めているのが92条と93条です。

ことばの確認

就業規則は法令・労働協約に従う(92条)

会社が作る就業規則は、法令にも、その事業場に適用される労働協約にも反してはいけません。反している就業規則には、監督署長が変更を命じることができます。

注意したいのは、命令が出ただけでは規則の中身は変わらない点です。使用者が実際に変更の手続をして、はじめて変わります。その手続では、通常の変更と同じく意見聴取と届出が必要です。

労働協約が契約を上書きする(労働組合法16条)

労働協約で定めた労働条件などの基準に反する労働契約の部分は無効になり、その部分は協約の基準で置き換わります。契約に定めがない事項も、協約の基準で埋められます。これを規範的効力といいます。

ポイント労働協約は、原則として協約を結んだ組合の組合員にだけ及びます。同じ職場でも、組合に入っていない人には協約が適用されず、就業規則がそのまま適用されます。

就業規則が契約の「最低ライン」になる(93条・労働契約法12条)

93条自体は「労働契約法12条による」と書いてあるだけです。中身は労働契約法12条にあります。就業規則の基準より不利な条件を定めた労働契約は、その不利な部分だけが無効になり、就業規則の基準に置き換わります。契約全部が無効になるわけではありません。これを就業規則の最低基準効といいます。

逆に、就業規則より有利な条件を個別に約束した部分は、そのまま有効です。

具体例で考える

家電メーカー「あおば電機」の就業規則では、通勤手当を「上限月3万円まで実費支給」としています。ところが中途採用のEさんの雇用契約書には「通勤手当は月1万円まで」と書かれていました。Eさんの実費が月2万円なら、契約の「1万円まで」は就業規則の基準に届かない部分として無効になり、就業規則どおり2万円が支給されます。一方、Fさんとは「通勤手当は上限なしで実費支給」と約束していたとします。就業規則より有利なので、この約束はそのまま有効です。

就業規則の定めが労働者を拘束する場面として、所持品検査についての最高裁判例があります。合理的な理由があり、方法と程度が妥当で、全員に一律に行う制度としての所持品検査が、就業規則などの明示の根拠に基づいて行われるなら、特段の事情がない限り、従業員は検査を受け入れなければなりません〔西日本鉄道事件・最高裁昭和43年8月2日〕。

4つのルールの序列

労基法13条・92条、労働組合法16条、労働契約法12条・13条を組み合わせると、強い順に「法令 → 労働協約 → 就業規則 → 労働契約」と並びます。

上のルールほど強い法令(労基法など)労働協約(組合と会社)就業規則(会社が作成)労働契約(会社と個人)規則は法令・協約に反しない(労基法92条)労契法12条協約 vs 契約→ 労組法16条法令 vs 契約→ 労基法13条
右側は就業規則を基準に見た条文、左側は労働契約を上位のルールと直接比べる条文。
比べる組合せ根拠どうなるか
労基法 と 労働契約労基法13条基準に届かない部分は無効。労基法の基準で置き換わる
労働協約 と 労働契約労働組合法16条基準に反する部分は無効。協約の基準で置き換わる
就業規則 と 労働契約労働契約法12条(労基法93条)基準に届かない部分は無効。就業規則の基準で置き換わる
法令・労働協約 と 就業規則労基法92条就業規則はこれらに反してはならない。監督署長は変更を命じられる

ひっかけ注意変更を命じるのは「所轄労働基準監督署長」です。「都道府県労働局長が助言・指導・勧告を行い、従わないときは公表できる」という仕組みは92条にはありません。また「変更命令が出た時点で就業規則は変更されたものとみなされる」も誤りです。

暗記序列は「法令>協約>規則>契約」。下の層が上の層に届かない部分だけが無効になり、上の基準に入れ替わります。この形は労基法13条・労組法16条・労契法12条に共通です。上の層より有利な部分は残ります。

覚え方「4階建てのビル。下の階が上の階より狭ければ、その部屋だけ上の基準にリフォーム」……労働条件のルールは強い順に、法令>労働協約>就業規則>労働契約。就業規則は法令・労働協約に反してはならず、監督署長は変更を命じられる(92条)。就業規則の基準に達しない労働契約の部分は無効になり、就業規則の基準による(93条・労働契約法12条)。上の層より有利な部分は有効。

労働条件のルールは強い順に
  1. 1
    法令労基法など
  2. 2
    労働協約組合と会社。反する契約の部分は協約の基準に
  3. 3
    就業規則法令・協約に反してはならない(92条)
  4. 4
    労働契約就業規則に届かない部分だけ無効→規則の基準に。有利な部分は有効

ロウ先生狭い部屋だけ上の基準にリフォームです。

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