労働基準法 ・ 第13章 寄宿舎・監督・書類・罰則
13-1寄宿舎生活の自由と使用者の義務第94条〜第96条の3
【94条】① 使用者は、事業の附属寄宿舎に寄宿する労働者の私生活の自由を侵してはならない。
② 使用者は、寮長、室長その他寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任に干渉してはならない。
【95条1項】事業の附属寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者は、左の事項について寄宿舎規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。これを変更した場合においても同様である。
一 起床、就寝、外出及び外泊に関する事項
二 行事に関する事項
三 食事に関する事項
四 安全及び衛生に関する事項
五 建設物及び設備の管理に関する事項
【95条2項】使用者は、前項第1号乃至第4号の事項に関する規定の作成又は変更については、寄宿舎に寄宿する労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならない。
【96条1項】使用者は、事業の附属寄宿舎について、換気、採光、照明、保温、防湿、清潔、避難、定員の収容、就寝に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置を講じなければならない。
【96条の2第1項】使用者は、常時10人以上の労働者を就業させる事業、厚生労働省令で定める危険な事業又は衛生上有害な事業の附属寄宿舎を設置し、移転し、又は変更しようとする場合においては、前条の規定に基づいて発する厚生労働省令で定める危害防止等に関する基準に従い定めた計画を、工事着手14日前までに、行政官庁に届け出なければならない。
【96条の3第1項】労働者を就業させる事業の附属寄宿舎が、安全及び衛生に関し定められた基準に反する場合においては、行政官庁は、使用者に対して、その全部又は一部の使用の停止、変更その他必要な事項を命ずることができる。
ポテ寮の門限のルールなら、会社が決めて届け出ればOKですよね?
ロウ先生起床・就寝・外出・外泊、行事、食事、安全衛生の4つは、寮生の過半数代表の同意が必要です。
ポテボイラー室の点検手順も同意が要るんですか?
ロウ先生建物・設備の管理だけは同意が要りません。建物の管理は所有者である会社の領分だからです。
ポテなるほど!暮らしのルールは住む人のOKが要って、建物のことは大家さんの仕事なんですね!
会社が用意した寮に住むと、仕事と生活の境目があいまいになります。放っておくと、会社が寮生の私生活まで管理しかねません。そこで労基法は、寮の中では働く人の自由を守り、同時に建物の安全は会社にきちんと責任を持たせる、という二本立てのルールを置いています。
どんな建物が「附属寄宿舎」か
対象になるのは、事業に付いている寮だけです。判断の目安は次の二段階です。
- 寄宿舎といえるか:かなりの人数がふだんから泊まっているか、独立した建物や区切られた区画になっているか、共同で暮らしている実態があるか。
- 事業に附属しているか:仕事の管理上、共同生活が求められているか、職場の中や近くにあるか。
建設現場の作業員宿舎や、大きな病院の看護師寮がこれにあたる例として挙げられています〔昭和23年基発508号〕。共同生活の実態がなければ、会社が用意した住まいでも寄宿舎にはあたりません。
寮の中の自由(94条)
「私生活」とは、仕事から離れた時間の暮らしのことです。会社はそこに口を出せません。さらに、寮の自治を担う寮長や室長を誰にするかにも干渉できません。
干渉の範囲は広くとらえられています。選び方の手続に口をはさむことはもちろん、役員の構成や決め方の案を会社が作ることもだめです。会社側が送り込んだ舎監や世話役が、自治の役員を兼ねることも認められません〔昭和23年基収1317号〕。
とはいえ、建物そのものは会社の管理下にあります。管理人や寮母を会社が選んで置くことは、私生活の自由を侵さない限り問題ありません。ただしその人を寮長などの自治役員にすることはできません〔昭和22年発基17号〕。また、自治の仕事だけをしている寮長に会社が給料を払うかどうかは、当事者が自由に決めてよいとされています〔昭和23年基収1933号〕。
ひっかけ注意罰則があるのは2項(役員選びへの干渉)だけです。1項(私生活の自由)には罰則がありません。2項違反は119条で、6箇月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金です。
寮のルールブック(95条)
寮に人を住まわせる会社は、寄宿舎規則を作って労働基準監督署長に届け出ます。変えたときも届出が要ります。書くべき事項は条文の5つで、1つでも抜けていると届出は受け付けてもらえません。
ここで大事なのが、寮に住む人たちの過半数代表の「同意」です。対象と要否を表にまとめます。
| 記載事項 | 寮生代表の同意 |
|---|---|
| 1 起床・就寝・外出・外泊 | 要る |
| 2 行事 | 要る |
| 3 食事 | 要る |
| 4 安全・衛生 | 要る |
| 5 建物・設備の管理 | 要らない |
5だけ同意が不要なのは、建物の管理は所有者である会社の領分だからです。届出のときは、同意を得たことを示す書面を付けます(95条3項)。できあがった規則は、会社も寮生も守らなければなりません(95条4項)。ただし、この守る義務に違反しても罰則はありません。
届出先は原則として所轄の署長です。建設業の寮で、寮の所在地を受け持つ署長が別にいるときは、その署長に出すこともできます〔建設業附属寄宿舎規程2条1項〕。
ポイント就業規則と比べると違いがはっきりします。就業規則は過半数代表の意見を聴けば足ります。寄宿舎規則の1〜4は、意見ではなく同意が必要です。暮らしの中身を決めるルールなので、住む人の納得をより強く求めているわけです。
建物の安全を守る義務(96条〜96条の3)
会社は、換気・明るさ・暖かさ・避難・定員など、住む人の健康と命を守る措置をとる義務を負います。具体的な基準は、事業附属寄宿舎規程(第一種・第二種寄宿舎の安全衛生基準)と建設業附属寄宿舎規程に定められています。
さらに、危険が大きい寮については、建てる前の段階から行政がチェックします。
- 計画の届出(96条の2):常時10人以上が働く事業の寮、または省令で定める危険・有害な事業の寮を建てる・移す・変えるときは、工事を始める14日前までに計画を署長に届け出ます。危険・有害な事業には、プレス機械やシャーで金属を加工する業務、電気の発電・送電・変電などの業務を行う事業があり、こちらは人数を問いません。署長は、安全衛生上必要と認めれば、工事の差止めや計画の変更を命じられます。
- 使用停止など(96条の3):できあがった寮が基準に反していれば、署長は全部または一部の使用停止や変更を命じられます。会社に命じた内容に関連して、寮生本人に必要なことを命じることもでき、寮生がこれに従わなければ寮生にも罰則がかかります。
具体例で考える
水産加工のB社は、工場の隣に従業員12人が暮らす寮を持っています。新しく寮規則を作ることになり、総務課が案を用意しました。
- 門限を22時にする条項(1の事項)は、寮生の過半数代表の同意がなければ定められません。
- ボイラー室の点検手順(5の事項)は、同意がなくても定められます。
- 総務課長が「寮長は工場長が指名する」と書き込むのは、94条2項に反します。
- 2棟目の寮を増築するなら、着工の14日前までに計画の届出が必要です。
暗記同意が要るのは1〜4、要らないのは5(建物・設備)。計画の届出は「常時10人以上」または危険・有害事業で、着工14日前まで。罰則がないのは94条1項と95条4項。
覚え方「ジュウ(10)人の寮は、いよいよ(14)着工の前に届出」……常時10人以上の労働者を就業させる事業や、省令で定める危険・有害な事業の附属寄宿舎を設置・移転・変更するときは、工事着手14日前までに計画を届け出る(96条の2)。寄宿舎規則の起床・就寝等、行事、食事、安全衛生の4つは寮生の過半数代表の同意が必要で、建物・設備の管理は不要(95条)。
- 起床・就寝・外出・外泊
- 行事
- 食事
- 安全・衛生
- 建物・設備の管理

ポテ暮らしのルールは住む人のOKが要るんですね!