労働基準法 ・ 第2章 誰に・どこに適用されるか ― 適用範囲と基本用語
2-2同居の親族・家事使用人・国や自治体の扱い第112条・第116条
第116条
1. 第1条から第11条まで、次項、第117条から第119条まで及び第121条の規定を除き、この法律は、船員法(昭和22年法律第100号)第1条第1項に規定する船員については、適用しない。
2. この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。
第112条(国及び公共団体についての適用)
この法律及びこの法律に基いて発する命令は、国、都道府県、市町村その他これに準ずべきものについても適用あるものとする。
ポテ家事使用人って、法人に雇われていれば当てはまらないんですよね?
ロウ先生いいえ。法人に雇われていても、役員の自宅でその家族の指示を受けて家事をする人は家事使用人です。分かれ目は、家事を指図しているのが家庭の側か会社の側かです。
ポテえっ、そうなの!?じゃあ家族だけでやってる八百屋さんが、パートさんを雇ったら?
ロウ先生家族以外を一人でもふだんから雇えば、その事業には労基法がかかります。
ポテなるほど!家族だけの晩ごはんに、お客さんが一人来たらよそ行きのマナーになる、みたいな感じですね!
2-1で見たとおり、労基法はほぼすべての職場に及びます。この節は、その「例外」を集めた場所です。国が家庭の中まで踏み込むのは行き過ぎだ、別の法律がすでに面倒を見ている、といった理由で外されている人たちがいます。
外れる人・一部だけ外れる人の一覧
| 対象 | 労基法の扱い | 理由・補足 |
|---|---|---|
| 同居の親族だけで営む事業 | 適用なし | 家族内のことに法が介入しない |
| 家事使用人 | 適用なし | 家庭の私生活に関わるため |
| 船員法上の船員 | 総則(1〜11条)と罰則の一部などだけ適用 | 労働時間などは船員法が定める |
| 一般職の国家公務員(下の行の職員は別) | 適用なし | 国家公務員法の側で適用を外している |
| 行政執行法人の職員 | 全面適用 | 国家公務員の身分はあるが労基法の対象 |
| 一般職の地方公務員 | 一部適用なし | 地方公務員法が一部の条文を外している |
同居の親族
親族の範囲は民法725条によります。6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族です。そのうえで「同居」していることが条件になります。
適用されないのは、働いているのが同居の親族「だけ」の事業です。家族以外の人を一人でもふだんから雇っていれば、その事業には労基法がかかります。
では、その事業で働く家族はどうなるのでしょうか。〔昭和54年基発153号〕は、原則として労働者には当たらないとしつつ、次のすべてにあてはまれば労働者として扱うとしています。
- 事業主の指揮命令に従って働いていることがはっきりしている
- 始業・終業の時刻や休日など、働き方が他の従業員と変わらない
- 賃金の決め方や支払い方も他の従業員と同じである
具体例で考える
田中さんは自宅の隣で小さな青果店を営んでいます。手伝っているのは同居する妻と長男の二人だけです。この店には労基法は適用されません。
翌年、繁忙期に備えて近所の佐藤さんをパートで雇い、毎週働いてもらうことにしました。家族以外を常に使うようになったので、店は労基法の適用事業になります。佐藤さんはもちろん労働者です。長男も、佐藤さんと同じシフトで店長の指示を受けて働き、同じ時給の仕組みで給料をもらっているなら、労働者として扱われます。
家事使用人
家庭で掃除・洗濯・料理などの家事全般をする人のことです。判断のカギは「誰の指揮命令で働くか」です〔昭和63年基発150号、平成11年基発168号〕。
- 法人に雇われていても、役員の自宅でその家族の指示を受けて家事をする人は、家事使用人です。労基法は適用されません。
- 家事代行サービスの会社に雇われ、その会社の指示で各家庭に派遣されて家事をする人は、家事使用人ではありません。会社の労働者として労基法が適用されます。
ひっかけ注意「法人に雇われている者は家事使用人に当たらない」という一般化は誤りです。雇い主が法人かどうかではなく、家事を指図しているのが家庭の側か、事業として請け負う会社の側かで分かれます。
船員
船の上の働き方は特殊なので、労働時間や休日などは船員法が定めています。そのため労基法は、総則にあたる1条から11条と、それに関わる罰則などだけが船員にも及びます。
ただし、船員法でいう「船舶」に入らない船もあります。総トン数5トン未満の船、湖や川・港の中だけを走る船、政令で定める総トン数30トン未満の漁船などです。こうした船の乗組員は船員法上の船員ではないので、労基法がまるごと適用されます。
国・地方公共団体
112条は、国や自治体も労基法の対象になることを確認した条文です。官庁だからといって当然に外れるわけではありません。実際に外れるかどうかは、公務員について定めた法律の側で決まっています。
- 一般職の国家公務員は、国家公務員法の附則で労基法の適用が外されています。ただし行政執行法人の職員には全面的に適用されます。
- 一般職の地方公務員には、地方公務員法で外された一部の規定を除き、労基法が適用されます。
- 行政執行法人以外の独立行政法人の職員は、国家公務員の身分を持たないので、民間と同じく全面適用です。
ポイント「同居の親族」は事業単位の話、「家事使用人」は人単位の話です。前者は家族以外を雇えば事業ごと適用対象に変わり、後者はどの家庭で働いても指揮命令の出どころで決まります。
暗記親族=6親等の血族・配偶者・3親等の姻族+同居。船員でも1〜11条は適用。5トン未満の船・30トン未満の一定の漁船は全面適用。
覚え方「血はロック(6)、姻はサンバ(3)。ごめん(5)小舟と、さお(30)さす漁船は丸ごと労基法」……親族の範囲は6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族(民法725条)で、同居していることが条件。総トン数5トン未満の船や、政令で定める総トン数30トン未満の漁船などの乗組員は船員法上の船員ではないので、労基法がまるごと適用される。