労働基準法 ・ 第2章 誰に・どこに適用されるか ― 適用範囲と基本用語
2-4「使用者」として責任を負う者の範囲第10条
この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
ポテ課長とか部長って肩書きがあれば、みんな「使用者」なんですよね?
ロウ先生肩書きではなく権限で判断します。労働条件の決定や業務命令について一定の権限を任されている人が当たり、上からの指示を伝えるだけの人は含まれません。
ポテじゃあ店長は給料をもらってる労働者だから、使用者にはならない?
ロウ先生労働者である人が、同時に使用者になることもあります。使用者かどうかは、場面ごとの権限と責任で決まる相対的なものです。
ポテなるほど!ぼくもお店ではお客さん、家ではおやつの番犬、みたいな!
労基法の義務を守らなければならないのは誰か、違反したら罰せられるのは誰か。それを決めるのが10条です。会社の社長だけに責任を押しつけるのではなく、現場で実際に労働者を動かしている人にも責任を負わせる仕組みになっています。
三つのグループ
| 区分 | どんな者か | 例 |
|---|---|---|
| 事業主 | 事業を経営する主体そのもの | 個人経営なら店主本人、会社なら法人そのもの |
| 事業の経営担当者 | 事業の経営全般に責任を持つ者 | 会社の取締役、個人企業の支配人 |
| 事業主のために行為をする者 | 労働者に関することで、事業主に代わって動く者 | 人事部長、工場長、店長など |
三つ目のグループに当たるかどうかは、肩書きではなく権限で判断します。行政解釈〔昭和22年発基17号ほか〕は、人事・給与・労務管理など労働条件の決定や業務命令の発出について、一定の権限を任されている者をこれに当たるとしています。権限がなく、上からの指示を伝えるだけの人は含まれません。
労働者でもあり、使用者でもある
使用者かどうかは、ある場面でどんな権限を持ち、どんな責任を負うかによって決まる相対的なものです。そのため、9条の労働者である人が、同時に10条の使用者になることがあります。
具体例で考える
家電量販店C社の天神店で店長を務める高橋さんは、C社に雇われて給料をもらっています。この面では9条の労働者です。
一方で高橋さんは、店のアルバイトのシフトを組み、残業を命じる権限を会社から与えられています。高橋さんがアルバイトに36協定の上限を超える残業をさせれば、高橋さんは「事業主のために行為をする者」として、違反の責任を問われる立場にあります。同時に、会社(事業主)も両罰規定によって責任を負います。
出向・派遣のときの使用者
働く人と、雇う会社と、指示を出す会社が分かれるときは、責任の分け方が問題になります。
- 移籍型出向〔昭和61年基発333号〕:出向元との労働契約は終わり、出向先とだけ契約があります。労基法の責任を負うのは出向先だけです。
- 在籍型出向〔同〕:出向元・出向先の両方と労働契約があります。三者の取り決めで分けた権限と責任に応じて、出向元か出向先がそれぞれ使用者の責任を負います。
- 労働者派遣:派遣法の特例で、責任が分担されています。主なものは下の表のとおりです。
| 派遣元が責任を負う主なもの | 派遣先が責任を負う主なもの |
|---|---|
| 労働契約、賃金、割増賃金、男女同一賃金、年次有給休暇、産前産後休業、就業規則など | 労働時間、休憩、休日、公民権の行使、育児時間など |
覚え方としては、契約やお金に関わるものは雇っている派遣元、日々の働かせ方に関わるものは現場で指示する派遣先、と整理できます。
社会保険労務士と使用者
法令で事業主に義務づけられた申請などについて、事務の代理を任された社会保険労務士が、怠ってその申請をしなかった場合があります。〔昭和62年基発169号〕は、このときその社会保険労務士が10条の使用者に当たるとしています。さらに、両罰規定にいう「代理人、使用人その他の従業者」にも当たり、違反行為者として罰則の対象になります。
ひっかけ注意「部長・課長などの役職にある者は使用者に当たる」と肩書きで決める選択肢は誤りです。逆に「労働者である以上、使用者にはならない」も誤りです。決め手はその場面での権限です。
暗記10条の三本柱は「主・経営・代わりに動く人」。移籍型出向=出向先のみ。在籍型出向=取り決めの権限に応じて双方。
覚え方「いせき(移籍)は いく先(出向先)だけ。お金はモト(派遣元)、時間はサキ(派遣先)」……移籍型出向では出向先だけが使用者の責任を負い、在籍型出向では三者の取り決めで分けた権限と責任に応じて出向元・出向先がそれぞれ負う。派遣では、労働契約・賃金・年次有給休暇・就業規則など契約やお金に関わるものは派遣元、労働時間・休憩・休日など日々の働かせ方に関わるものは派遣先が責任を負う。
- 労働契約
- 賃金・割増賃金
- 年次有給休暇
- 産前産後休業
- 就業規則
- 労働時間
- 休憩
- 休日
- 公民権の行使
- 育児時間