労働基準法 ・ 第3章 雇い入れから退職まで ― 労働契約のルール
3-1基準に届かない契約部分はどうなるか第13条
この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。
ポテ契約書に法律より悪い条件が一つでもあったら、契約まるごと無効ですよね?
ロウ先生無効になるのは、基準に達しない部分だけです。その部分は労基法の基準で埋められます。
ポテじゃあ「1日9時間」って書いてあったら?
ロウ先生8時間を超える部分は効力を失い、8時間に置き換わります。月給の取り決めなど、ほかの部分は有効なまま残ります。
ポテなるほど!おにぎりの具が傷んでたら、その具だけが法律の具に入れかわるんですね!
第13条は、労基法の基準に「契約の中身を書き換える力」を与える条文です。罰則で使用者を罰するだけでは、働く人の手元の契約は低いままです。そこで、低すぎる部分を法律の基準へ自動で引き上げることにしました。
具体例で考える
たとえば、架空の運送会社「みなと物流」が、ドライバーの田中さんと次のような契約を結んだとします。
- 月給は25万円
- 1日の所定労働時間は9時間
- 有給休暇は与えない
このうち月給の取り決めは、法律の基準と関係なく有効なまま残ります。一方、「1日9時間」は法定の8時間を上回るので、その超える部分は効力を失い、8時間に置き換わります。「有給なし」も同じで、39条が定める日数の年休が当然に認められます。
大事なのは、契約書全体が紙くずになるわけではない点です。問題のある条項だけが切り取られ、その穴を労基法の数字が埋めます。これを「部分無効」と「補充(直律)」と呼ぶことがあります。
ルールの上下関係
労働条件を決めるルールは何層にも重なっています。上にあるものほど強く、下のものが上に反すると、反した部分は効力を持ちません。
| 順位 | ルール | 下位を無効にする根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 法令(労基法など) | 労基法13条 |
| 2 | 労働協約 | 労働組合法16条 |
| 3 | 就業規則 | 労働契約法12条 |
| 4 | 個々の労働契約 | ― |
個人どうしの約束である労働契約は、いちばん下に位置します。「本人が納得してサインしたのだから有効だ」という言い分は、上位のルールの前では通りません。
ひっかけ注意36協定のような労使協定は、この上下関係の表に入りません。労使協定の役割は、それがあれば法定の枠を超えても罰せられないという効果(免罰的効力)を生むことです。協定だけで労働者に残業する義務が生まれるわけではない、と押さえておきましょう。
ポイント13条が働くのは「基準より低い」方向だけです。法律より有利な条件(たとえば1日7時間勤務)は、そのまま有効です。
労働契約という言葉の範囲
労基法でいう労働契約は、使用者の指揮のもとで働き、その見返りに賃金を受け取る約束を広く指します。民法の「雇用」と中身は大きく変わりません。契約書の題名が「業務委託」や「請負」であっても、実際の働き方が使用者の指揮命令下にあれば、労働契約として扱われることがあります。名前ではなく実態で判断するという考え方です。
暗記13条のキーワードは「その部分だけ無効」+「基準で埋める」の2点セット。全部無効、とあればまず疑ってかかりましょう。
覚え方「ホー・キョー・シュー・ケー、下は上に逆らえない」……労働条件のルールは強い順に、法令(労基法など)>労働協約>就業規則>労働契約。労基法の基準に達しない労働契約の部分だけが無効になり、その部分は労基法の基準で埋められる(13条)。法律より有利な条件はそのまま有効。
- 1法令(労基法など)下位を無効にする根拠は労基法13条
- 2労働協約労働組合法16条
- 3就業規則労働契約法12条
- 4労働契約基準に達しない部分だけ無効→基準で埋める(有利な条件は有効)

ポテホー・キョー・シュー・ケー!