労働基準法 ・ 第3章 雇い入れから退職まで ― 労働契約のルール
3-11退職証明書の交付と就業妨害の通信の禁止第22条
① 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
② 労働者が、第20条第1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。
③ 前2項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。
④ 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第1項及び第2項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。
ポテ退職証明書には、使用期間も賃金も退職の理由も、法律の項目を全部書くのが親切ですよね?
ロウ先生証明書には、本人が請求していない事項を書いてはいけません。法定の項目であっても同じです。
ポテえっ、そうなの!?じゃあ「解雇された事実だけ書いて」って頼まれたら?
ロウ先生その場合は、理由を書いてはいけません。なお、請求できるのは退職から2年以内です。
ポテなるほど!注文してないトッピングは乗せちゃダメ、ってことですね!
会社を辞めた人は、転職先に経歴を示したり、解雇に納得できず争ったりするために、前の会社が書いた「証明」を必要とすることがあります。22条は、その証明書を本人が求めれば出させること、そして本人の再就職を裏で邪魔させないことを定めています。
2種類の証明書
| 退職時の証明(1項) | 解雇理由の証明(2項) | |
|---|---|---|
| 請求できる時期 | 退職した後(退職と同時でなくてよい) | 解雇予告の日から退職日まで |
| 書く内容 | 使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由(解雇ならその理由)のうち、本人が求めたもの | その解雇の理由 |
| 交付の期限 | 遅滞なく | |
| 書いてはいけないこと | 本人が求めていない事項(法定の項目であっても不可) | |
1項の「退職」は広い意味です。自己都合で辞めた場合のほか、懲戒解雇、契約期間の満了、定年などで契約が終わった場合も含みます。
暗記請求できるのは退職から2年以内〔平成11年基発169号〕。その間なら、何回請求しても構いません。
覚え方「国産新車(国籍・信条・社会的身分)に組合(労働組合運動)ステッカー、ひみつの記号もお断り」……あらかじめ第三者と謀り、就業を妨げる目的で通信してはならない事項は、国籍・信条・社会的身分・労働組合運動の4つ。証明書に秘密の記号を書き込むことも禁止(22条4項)。退職時の証明書は退職から2年以内なら何回でも請求できる。
- 国籍
- 信条
- 社会的身分
- 労働組合運動
- 勤務態度など、4つ以外の事項
- 事前の申し合わせなしで個別の問い合わせに答える

ロウ先生「国産新車に組合ステッカー」で4つです
具体例で考える
家具販売のJ社は、営業職のKさんに「来月末で解雇する」と予告しました。
- 予告の翌週、Kさんが「解雇の理由を書面でください」と求めました。J社は2項にもとづき、遅滞なく解雇理由の証明書を出さなければなりません。
- 解雇の理由は具体的に書く必要があります。就業規則の条項を根拠にするなら、その条項の中身と、条項に当てはまると判断した事実関係まで書きます〔平成15年基発1022001号〕。
- その後、Kさんは解雇日を待たずに自分から辞めて転職しました。この場合、退職日以後は2項の証明書を出す義務がなくなります。それでもKさんが退職時の証明を求めれば、1項の証明書は出さなければなりません。
ポイントKさんが「解雇されたという事実だけ書いてほしい」と頼んだら、J社は理由を書いてはいけません。3項が禁じているのは「本人が頼んでいないことを書く」ことだからです。
行政解釈
- 〔平成11年基発169号〕証明書を何に使うかは労働者の自由です。一方、離職票はハローワークに出す別の書類なので、退職時の証明書の代わりにはなりません。
- 〔同上〕本人が求めた事項について事実を書き、遅滞なく渡して初めて義務を果たしたことになります。退職の理由について会社と本人の言い分が食い違う場合、会社が自分の見解を書いて遅滞なく渡せば、基本的に違反にはなりません。ただし、それが虚偽であれば別です。たとえば以前本人に伝えた理由と違うことを書いた場合などは、義務を果たしたとはいえません。
- 〔平成15年基発1022001号〕予告期間中に解雇理由の証明を求めた人は、その後予告期間が過ぎても、改めて1項で請求し直す必要はありません。会社は引き続き2項の交付義務を負います(本人が解雇以外の理由で退職した場合を除く)。
- 〔同上〕予告なしの即時解雇には、予告期間がないので2項は使えません。即時解雇の通知後に理由の証明を求められたら、会社は1項にもとづいて交付します。
ブラックリストの禁止(4項)
4項がねらうのは、会社同士が組んで「この人は雇わないように」と情報を回すことです。禁止されるのは次の2つです。
- あらかじめ第三者と申し合わせたうえで、就業を妨げる目的で、国籍・信条・社会的身分・労働組合運動についての通信をすること
- 1項・2項の証明書に秘密の記号を書き込むこと
ひっかけ注意通信が禁止される事項は上の4つに限られます。たとえば「勤務態度」などそれ以外の事項について情報をやり取りしても、4項違反にはなりません。また、事前の申し合わせがないまま、他社からの個別の問い合わせに答えることも禁止の対象外です。