労働基準法 ・ 第4章 賃金の支払い方 ― 支払のルールと生活の保障
4-3会社都合で休ませたときの休業手当第26条
働く気も体力もあるのに、会社の事情で「今日は来なくていい」と言われたら、その日の収入はゼロになりかねません。26条は、そうした会社側の事情による休業について、最低でも平均賃金の6割を払わせることで労働者の生活を守ります。
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。
ポテ会社に過失がなければ、休ませても休業手当はいらないですよね?
ロウ先生いいえ。故意や過失がなくても、経営や管理の面で使用者側に生じた障害なら休業手当が必要です。外れるのは不可抗力だけです。
ポテえっ、そうなの!?じゃあ親会社の資金繰りが苦しくて、材料が来ないときも?
ロウ先生原則として使用者の責に帰すべき事由に当たり、平均賃金の60%以上を払います。大地震で工場が倒れたような不可抗力なら不要です。
ポテなるほど!材料が来なくても、ぼくのごはん代の6割は守られるんですね!
具体例で考える
部品メーカーE社は、取引先の親会社が資金繰りに行き詰まり、材料も代金も入ってこなくなりました。E社は工場を5日間止め、従業員を休ませました。E社に落ち度があるとは言いにくい状況ですが、これは休業手当が必要な休業です。親会社の経営難で下請が資材や資金を確保できずに休んだケースは、原則として使用者の責に帰すべき事由に当たるとされています〔昭和23年基収1998号〕。
これに対して、大地震で工場の建物が倒壊し、操業できなくなった場合は不可抗力となり、休業手当は不要です。
ここでいう「休業」は、働く準備と意思があるのに働けない状態をいいます。工場全体の操業停止だけでなく、特定の労働者だけを本人の意に反して就労させない場合も含みます〔昭和24年基収4077号〕。
「使用者の責に帰すべき事由」はどこまで広いか
ポイントは、使用者の故意や過失がある場合に限られない、という点です。経営や管理の面で使用者側に生じた障害も含まれます〔昭和23年基発1074号〕。外れるのは不可抗力だけで、不可抗力といえるには次の2つを両方満たす必要があります〔昭和23年基発1379号ほか〕。
- 原因が事業の外側から生じた事故であること
- 通常の経営者として最大限の注意を払っても避けられなかったこと
| 休業手当が必要とされた例 | 休業手当が不要とされた例 |
|---|---|
| 親会社の経営難で、下請が資材・資金を得られず休業〔昭和23年基収1998号〕 | 33条2項の代休付与命令にもとづいて与えた休憩・休日〔昭和23年基収1935号〕 |
| 会社の都合で、採用内定者の入社日を後ろへずらし自宅で待たせた期間〔昭和63年基発150号〕 | 社会通念上正当なロックアウトによる休業〔昭和23年基収1953号〕 |
| 機械の検査、原材料の不足、生産調整、資金難などによる休業 | 労働安全衛生法の健康診断の結果を受けて、休業させたり労働時間を短くしたりした場合〔昭和63年基発150号〕 |
電力会社による休電で休業した場合は、使用者の支配の外にある事情なので、原則として休業手当は要りません。ただし、休電の影響を受けない事務部門まで休ませたときは、この扱いが当然には及びません〔昭和26年基発696号〕。
民法の危険負担とのちがい
民法536条2項にも「債権者の責めに帰すべき事由」で働けなくなったら、労働者は賃金を請求できる、というルールがあります。民法なら賃金の全額を請求できますが、故意・過失などに近い事情が必要です。労基法26条は6割に下がる代わりに、経営上の障害まで含む広い範囲をカバーします〔ノースウエスト航空事件・最高裁昭和62年7月17日〕。
| 民法536条2項 | 労基法26条 | |
|---|---|---|
| 対象となる事由 | 狭い(故意・過失やそれと同視できるもの) | 広い(経営・管理上の障害も含む。不可抗力は除く) |
| 受け取れる額 | 賃金の全額 | 平均賃金の60%以上 |
| 性格 | 任意規定(特約で排除できる) | 強行規定・罰則あり |
26条は民法の規定を押しのけるものではありません〔昭和22年基発502号〕。民法上全額を請求できる場面なら、労働者は全額を請求でき、休業手当はその中の一部という関係になります。両方を足して全額を超える額をもらえるわけではありません。
ノースウエスト航空事件では、組合が自分たちの判断で一部の職場だけストライキをしたため、ストに加わらなかった組合員の仕事がなくなり、会社が休業を命じました。最高裁は、これは使用者側の事情とはいえないとして、休業手当の請求を認めませんでした。
ひっかけ注意「26条の帰責事由は民法536条2項と同じ範囲である」「使用者に過失がなければ休業手当は不要」はいずれも誤りです。26条のほうが広く、過失がなくても経営上の障害なら支払義務が生じます。
金額の計算
休業した日については、その日の所定労働時間がたまたま短い日であっても、平均賃金の60%以上を払う必要があります〔昭和25年基発254号〕。
1日のうち一部だけ休ませた場合は、実際に働いた時間の賃金が平均賃金の60%に届いているかを見て、足りなければ差額を払います〔昭和27年基収3445号〕。
たとえば平均賃金が1万円のFさんを、午前だけ働かせて午後から帰した日を考えます。午前の分の賃金が4,000円なら、1万円×60%=6,000円との差額2,000円を休業手当として払います。午前の賃金が6,500円なら、すでに6割を超えているので追加は不要です。
そのほかの論点
- 休日:就業規則や労働協約などで休日とされている日には、休業手当を払う必要はありません〔昭和24年基収4077号〕。
- 支払方法:休業手当は11条の賃金に当たるため、24条の5原則に従い、休業期間が含まれる賃金計算期間の支払日に払います〔昭和63年基発150号〕。
- 派遣労働者:帰責事由があるかどうかは、派遣先ではなく派遣元について判断します〔平成11年労告137号〕。
- ロックアウト:正当な争議行為と認められる作業所閉鎖なら、その期間は使用者の責に帰すべき休業にならず、手当は不要です(丸島水門製作所事件・最高裁昭和50年4月25日の考え方)。
不当解雇の期間に他で稼いだ収入(中間収入)
解雇が無効とされると、会社は解雇から復職までの賃金を払うことになります。その間に労働者が別の勤め先で得た収入を差し引けるかについて、最高裁は次のように整理しています〔あけぼのタクシー事件・最高裁昭和62年4月2日、いずみ福祉会事件・最高裁平成18年3月28日〕。
- 平均賃金の6割までの部分からは差し引けない(26条で守られている部分)
- 6割を超える部分からは、同じ時期に得た中間収入を差し引ける
- 中間収入が平均賃金の4割を超えるときは、平均賃金の計算に入らない賃金(賞与など)からも差し引ける
暗記休業手当は「60%以上」。中間収入を引けないのも「6割まで」。数字はどちらも6です。
覚え方「ろく(6)に働かせてもらえない日は、ろく(6)割の手当」……使用者の責に帰すべき事由による休業では、休業期間中、平均賃金の100分の60以上の休業手当を払う(26条)。故意・過失がなくても経営・管理上の障害なら必要で、不可抗力なら不要。
- 使用者の故意・過失による休業
- 故意・過失がなくても経営・管理上の障害
- 例:親会社の経営難で資材・資金が得られない(原則)
- 不可抗力
- 例:大地震で工場の建物が倒壊