労働基準法 ・ 第5章 働く時間の原則 ― 労働時間・休憩・休日・時間外労働
5-1どこからどこまでが「労働時間」か第32条
ポテ夜勤の仮眠中、警報が一度も鳴らなかったら、ただ寝てただけだから労働時間じゃないですよね?
ロウ先生仮眠室から出られず、鳴ったらすぐ対応する決まりなら、何も起きなくても労働時間です。ものさしは「指揮命令下」、つまり会社の指示の下に置かれていたかどうかです。
ポテえっ、寝てても仕事中!? じゃあ就業規則に「これは休憩」って書いておけば……
ロウ先生書き方では決まりません。実際の様子を見て客観的に判断します。
ポテなるほど!ピーマンに「おやつ」ってシールを貼っても、中身はピーマンのままってことか!
労基法は「1日8時間・週40時間まで」と時間に枠をはめています。けれども、何を数えるのかが決まっていなければ、枠は役に立ちません。この節では、時計を回す時間と止める時間の線引きを確認します。
ことばの確認
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 法定労働時間 | 法律が上限として決めた時間です。 |
| 所定労働時間 | 会社が就業規則や契約で決めた「うちの勤務時間」です。法定労働時間より長くは決められません。 |
| 労働時間 | 会社にいる時間(拘束時間)から休憩を引いた時間です。実際に手を動かしている時間だけではありません。 |
| 手待時間 | 仕事と仕事のすき間で、次の指示や客を待っている時間です。 |
手待時間は、作業をしていなくても休憩にはなりません。呼ばれたらすぐ動く状態にある以上、会社の指示の下にいるからです。
判断のものさしは「指揮命令下」
最高裁は、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」ととらえました〔三菱重工長崎造船所事件・最高裁平成12年3月9日〕。そして、その判断は実態を見て客観的に行うもので、就業規則や労働協約に「この時間は労働時間ではない」と書いてあっても結論は変わらない、としています。
同じ判決は、作業服への着替えなどの準備行為についても判断しました。会社の中で行うよう義務づけられている、または事実上そうせざるを得ない場合は、始業前とされていても原則として労働時間です。数えるのは、社会通念上必要な範囲の時間です。
ポイント迷ったら「その時間、労働者は自由に動けたか」を考えます。会社の都合で場所や行動が縛られていれば、労働時間の方向に傾きます。
具体例で考える
警備会社に勤めるAさんは、夜勤中に4時間の仮眠をとります。ただし仮眠室から出られず、警報が鳴れば即座に対応するよう命じられています。実際には朝まで一度も警報が鳴りませんでした。
それでも、この仮眠は労働時間です。寝ている間も仕事から解放されたとはいえないからです〔大星ビル管理事件・最高裁平成14年2月28日〕。何も起きなかったかどうかは、結論を左右しません。
行政解釈と裁判例の整理
| 労働時間になるもの | 労働時間にならないもの |
|---|---|
| トラックに2人で乗り、交替で運転するときの、助手席での休息・仮眠〔昭和33年基収6286号〕 | 坑内で働いた人が作業を終えたあとの入浴〔昭和23年基発1575号〕 |
| 出勤を命じられ、決まった場所で待たされている時間〔昭和33年基収6286号〕 | 出席を強制しない、自由参加の時間外の技術教育〔昭和26年基収2875号〕 |
| 昼休みに交代で受け持つ来客当番〔昭和63年基発150号〕 | 一般健康診断の受診(労働時間としなくてもよい) |
| 特殊健康診断にかかる時間〔昭和47年基発602号〕 | |
| 会社が火事になり、帰宅していた社員が自分の判断で駆けつけ消火にあたった時間〔昭和63年基発150号〕 |
ひっかけ注意健康診断は2種類で扱いが分かれます。有害業務に就く人向けの「特殊」健診は労働時間です。全員が受ける「一般」健診は、労働時間に含めなくても構いません。逆にした選択肢がよく出ます。
時間を正しくつかむためのガイドライン〔平成29年基発0120第3号〕
自己申告がいい加減に運用されると、長時間労働や残業代の未払いにつながります。そこで国は、会社が労働時間を把握するときの手順を示しました。
- 始業と終業の時刻は、上司が自分の目で確かめて記録するか、タイムカード・ICカード・パソコンのログなど客観的な記録をもとに確かめて記録するのが原則です。
- どうしても自己申告に頼るなら、本人と管理者に十分説明し、必要に応じて実態を調べます。申告できる残業時間に上限を設けるなど、正しい申告を妨げる仕組みは置いてはいけません。
- 会社がはっきり、または暗に指示した仕事の時間は労働時間です。指示された制服への着替え、終業後の清掃、すぐ対応を求められる待機、受講が義務の研修などが当たります。
対象となるのは、41条に当たる人(管理監督者など)とみなし労働時間制の適用者(高度プロフェッショナル制度の対象者を含む)を除いた労働者です。ただし、対象外の人についても、会社は健康を守るために時間を適正に管理する責任を負います。
暗記賃金台帳に労働時間数を書かない、または偽って書くと、30万円以下の罰金です(120条)。労働時間の記録は109条により5年間(当分の間は3年間)保存します。
覚え方「ログは5年(当分は3年)しまっておく、ごまかせば罰金30万」……賃金台帳に労働時間数を書かない、または偽って書くと30万円以下の罰金(120条)。労働時間の記録は5年間(当分の間は3年間)保存する(109条)。
試験ではこう問われる
- 「就業規則で休憩と定めた時間なので労働時間ではない」→ 誤り。実態で判断します。
- 会社が黙って見ている自主的な残業、安全委員会・衛生委員会の会議時間も、労働時間に含まれます。