労働基準法 ・ 第5章 働く時間の原則 ― 労働時間・休憩・休日・時間外労働
5-6災害や公務による臨時の延長第33条
災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。
前項ただし書の規定による届出があつた場合において、行政官庁がその労働時間の延長又は休日の労働を不適当と認めるときは、その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを、命ずることができる。
公務のために臨時の必要がある場合においては、第1項の規定にかかわらず、官公署の事業(別表第1に掲げる事業を除く。)に従事する国家公務員及び地方公務員については、第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。
ペン社長いいこと思いついたぞ!年末はとにかく忙しい。33条の許可をもらって、残業し放題だ!
ロウ先生33条は、災害など避けることのできない事由で臨時の必要がある場合の規定です。単に忙しいだけでは認められません。忙しさへの対応は36協定の役目です。
ポテじゃあ真夜中にボイラーが壊れて、許可を取る暇がなかったら?
ロウ先生事態が急迫しているなら、事後に遅滞なく届け出れば足ります。
ペン社長忙しいのは災害じゃなかったか……わしの机の上は災害級なんだがな!
ポテ社長、それは片づけてください!
地震や火災の最中に「36協定がないので残業できません」では困ります。33条は、本当の緊急時に限って、労働時間の枠を一時的に外す道を用意しています。
使える場面と使えない場面〔令和元年基発0607第1号〕
ここでいう「避けることのできない事由」は、ふだんは予測しにくい事故などを指します。会社の判断だけに任せると濫用されかねないため、原則として事前に労働基準監督署長の許可を得る仕組みにしています。
| 認められる例 | 認められない例 |
|---|---|
| 地震・津波・風水害・雪害・爆発・火災などへの対応(差し迫ったおそれがあるときの事前準備も含む) | 単に仕事が忙しい |
| 急病人の対応など、人命や公益を守る必要があるとき | 忙しさに準ずる経営上の都合 |
| 事業が止まるほどの突発的な機械・設備の故障の修理、保安、システム障害の復旧 | 普通に予想できる機械の部分的な修理、定期的な保安点検 |
具体例で考える
K食品の工場で深夜にボイラーが故障し、このままでは翌朝の出荷が全面停止します。工場長は真夜中に監督署の許可を取る余裕がないと判断し、作業員に休日の日曜日に修理をさせました。この場合、月曜日以降に遅れずに届出をすれば足ります。
届出を受けた監督署長が「延長が長すぎた」と判断すると、その時間に相当する休憩や休日を後で与えるよう命じることがあります。その休憩・休日は会社の責任による休業ではないので、賃金や休業手当を払う必要はありません。
33条で外れるのは労働時間と休日の枠だけです。休憩を与える義務(34条)まで免除されるわけではないので、災害対応中でも休憩は与えます。
年少者・派遣労働者の扱い
- 災害などの場合は、18歳未満の年少者にも、必要な限度で時間外労働、休日労働、深夜業をさせることができます。
- 派遣労働者が派遣先で災害対応にあたるときは、派遣先の使用者がこの規定を使い、許可などの手続も派遣先が行います〔昭和61年基発333号〕。
公務のための延長(33条3項)
官公署の事業(別表第1の事業は除く)で働く国家公務員・地方公務員は、公務のため臨時の必要があれば、許可も届出もなしに時間を延長したり休日に働かせたりできます。年少者も必要な限度で時間外・休日労働の対象になりますが、深夜業はさせられません。
| 災害などの場合 | 公務の場合 | |
|---|---|---|
| 手続 | 事前の許可が原則。急ぐときは事後に遅滞なく届出 | 不要 |
| 年少者の時間外・休日労働 | できる | できる |
| 年少者の深夜業 | できる | できない |
ひっかけ注意「繁忙期で人手が足りないので33条の許可を申請した」は認められません。忙しさへの対応は36協定の守備範囲です。
覚え方「災害は“夜もOK”、公務は“夜はおやすみ”」……災害などの場合は、年少者にも必要な限度で時間外・休日労働と深夜業をさせられる。公務の場合、年少者の時間外・休日労働はできるが深夜業はできない。手続は、災害などは事前の許可が原則(急ぐときは事後に遅滞なく届出)、公務は不要(33条)。
- 手続:事前の許可が原則(急ぐときは事後に遅滞なく届出)
- 年少者の時間外・休日労働:できる
- 年少者の深夜業:できる
- 手続:不要
- 年少者の時間外・休日労働:できる
- 年少者の深夜業:できない

ロウ先生災害は夜もOK、公務は夜はおやすみ