労働基準法 ・ 第7章 柔軟な働き方の制度 ― 変形労働時間制・フレックス・みなし労働時間
7-11か月以内で平均する方式の導入方法第32条の2
① 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、一箇月以内の一定の期間を平均し一週間当たりの労働時間が前条第一項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
② 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。
ポテ1か月単位の変形制を協定で入れたのに、届出を忘れてた!制度は全部無効ですか?
ロウ先生届出は効力の条件ではないので、きちんと結ばれた協定があれば変形制そのものは動きます。ただし届け出ないと30万円以下の罰金の対象です。
ポテよかった……でも罰金はあるんだ。
ロウ先生ちなみにこの方式は、協定でも就業規則でも導入できます。1年単位と1週間単位は協定が必須です。
ポテなるほど!出し忘れた宿題でも答えは合ってる、でも先生には叱られる、ってやつですね!
月末に締め作業が集中する、第2週だけ棚卸しがある。そんな職場で「毎日8時間・毎週40時間」を厳格に守ろうとすると、忙しい日は残業、暇な日は手持ちぶさた、という無駄が生まれます。この条文は、1か月以内の枠の中で長い日と短い日をならし、平均で週40時間に収まっていれば、長い日も時間外労働として扱わないことにした仕組みです。
会社にとっては割増賃金の負担が減り、働く側にとっては暇な日に早く帰れる。結果として全体の労働時間を減らすことがねらいです。
導入に必要な3つのこと
- 根拠の書面を用意する:過半数組合(なければ過半数代表者)との労使協定か、就業規則(10人未満の事業場ならそれに準ずるもの)のどちらかで定めます。どちらを使ってもかまいません。
- 期間と時間を決める:平均をとる期間(変形期間)を1か月以内で決め、その起算日をはっきりさせます。そのうえで、期間内のどの日に何時間、どの週に何時間働くのかを具体的に定めます。平均すると週40時間(特例事業は44時間)以内でなければなりません。
- 協定なら届け出る:労使協定を使った場合は、労働基準監督署長に届け出ます。
協定を使う場合の細かいルール
- 協定には有効期間を書き込みます(労働協約の形で結ぶ場合を除きます。労基則12条の2の2第1項)。
- 届出をしなかったときは、30万円以下の罰金の対象になります(労基法120条)。
- ただし届出は、協定が効き目を持つための条件ではありません。きちんと結ばれた協定があれば、届出を忘れていても変形制そのものは適法に動きます。罰金と制度の有効性は切り分けて考えます。
就業規則を使う場合の細かいルール
- 常時10人以上を使う事業場は就業規則の作成義務があるので、就業規則で定めます。
- 10人未満の事業場は、就業規則に準ずる書面で足ります。この「準ずるもの」は労基署に届け出る必要がありません〔昭和22年発基17号〕。ただし、労働者への周知は必要です(労基則12条)。
- 協定で導入した場合でも、各日の始業・終業の時刻は就業規則に必ず書く事項(絶対的必要記載事項)です。協定を結んだから就業規則は触らなくてよい、とはなりません。
この方式には、1日や1週の労働時間の上限は設けられていません。1日10時間・1週52時間という上限があるのは、1年単位の方式のほうです(労基則12条の4第4項)。
枠の大きさを計算する
変形期間に働かせてよい時間の上限(法定労働時間の総枠)は、次の式で求めます。
40時間(特例対象事業は44時間)×変形期間の暦日数÷7
| 変形期間の暦日数 | 週40時間の事業 | 週44時間の特例事業 |
|---|---|---|
| 28日(4週間) | 160.0時間 | 176.0時間 |
| 30日 | 171.4時間 | 188.5時間 |
| 31日 | 177.1時間 | 194.8時間 |
変形期間は「1か月」にそろえる必要はなく、4週間や2週間といった区切りでもかまいません。
具体例で考える
経理代行のD社(従業員15人)は、毎月1日を起算日とし、月末の最終週だけ1日10時間、それ以外の日は1日7時間とするシフトを就業規則で定めました。30日の月なら総枠は171.4時間です。シフト表の合計がこの範囲に収まっていれば、最終週の10時間勤務の日も、あらかじめ定めた10時間までは時間外労働になりません。
ポイントこの方式は「協定でも就業規則でも導入できる」唯一の変形制です。1年単位と1週間単位は協定が必須なので、比べて覚えると混乱しません。
ひっかけ注意「協定を届け出なければ1か月単位の変形制は無効になる」は誤りです。届出は罰則で担保された義務ですが、効力の発生要件ではありません。
暗記総枠は「40×日数÷7」。30日で171.4、31日で177.1。特例事業は44で計算できる。
覚え方「1か月は“協定でも就業規則でも”の二刀流、1年と1週間は“協定だけ”の一本勝負」……1か月単位の変形制は労使協定か就業規則(10人未満は準ずるもの)で導入でき、1年単位と1週間単位は労使協定が必要。総枠は「40時間(特例44時間)×暦日数÷7」(32条の2)。
- 労使協定
- または就業規則(10人未満は準ずるもの)
- 労使協定が必要

ポテ1か月だけ二刀流!