労働基準法 ・ 第7章 柔軟な働き方の制度 ― 変形労働時間制・フレックス・みなし労働時間
7-7清算期間と時間外労働の考え方第32条の3・第32条の3の2
第32条の3 ② 清算期間が一箇月を超えるものである場合における前項の規定の適用については、同項各号列記以外の部分中「労働時間を超えない」とあるのは「労働時間を超えず、かつ、当該清算期間をその開始の日以後一箇月ごとに区分した各期間(最後に一箇月未満の期間を生じたときは、当該期間。以下この項において同じ。)ごとに当該各期間を平均し一週間当たりの労働時間が五十時間を超えない」と、「同項」とあるのは「同条第一項」とする。
③ 一週間の所定労働日数が五日の労働者について第一項の規定により労働させる場合における同項の規定の適用については、同項各号列記以外の部分(前項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)中「第三十二条第一項の労働時間」とあるのは「第三十二条第一項の労働時間(当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、労働時間の限度について、当該清算期間における所定労働日数を同条第二項の労働時間に乗じて得た時間とする旨を定めたときは、当該清算期間における日数を七で除して得た数をもつてその時間を除して得た時間)」と、「同項」とあるのは「同条第一項」とする。
ポテフレックスで今月は働きすぎちゃった。超えた分は、来月少なめに働いて相殺すればいいですよね?
ロウ先生働きすぎた分を次の清算期間に回して相殺すると、その期の賃金の一部を払わないことになり、24条違反です。逆に、足りなかった分を次の期に上乗せするのは、次の期の総枠の範囲内なら構いません。
ポテ向きが逆になるだけで、結論も逆になるんだ!
ロウ先生そうです。それと清算期間が1か月を超えるなら、月ごとに週平均50時間を超えた分は、その月の時間外です。
ポテなるほど!食べすぎた分のお代はその月に払う、ツケで来月に回すのはダメってことか!
第32条の3の2 使用者が、清算期間が一箇月を超えるものであるときの当該清算期間中の前条第一項の規定により労働させた期間が当該清算期間より短い労働者について、当該労働させた期間を平均し一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合においては、その超えた時間(第三十三条又は第三十六条第一項の規定により延長し、又は休日に労働させた時間を除く。)の労働については、第三十七条の規定の例により割増賃金を支払わなければならない。
フレックスタイム制では、ある日に10時間働いても、ある週に45時間働いても、それだけでは時間外になりません。時間外かどうかは、清算期間の合計で見て初めて決まります。この節では、その「合計の器」の大きさと、清算期間が1か月を超えるときに加わる歯止めを見ていきます。
器の大きさ(法定労働時間の総枠)
清算期間を平均して週40時間以内であれば、日や週で8時間・40時間を超えても時間外労働にはなりません。器の大きさは次の式で求めます。
40時間×清算期間の暦日数÷7
| 清算期間 | 週40時間で計算 | 特例対象事業(週44時間) |
|---|---|---|
| 4週間(28日) | 160.0時間 | 176.0時間 |
| 30日の月 | 171.4時間 | 188.5時間 |
| 31日の月 | 177.1時間 | 194.8時間 |
| 2か月・61日 | 348.5時間 | 1か月を超えると44時間は使えず、左と同じ |
| 3か月・91日 | 520.0時間 | |
| 3か月・92日 | 525.7時間 |
特例対象事業が44時間で計算できるのは、清算期間が1か月以内のときだけです(労基則25条の2第3項)。
1か月を超えるときの歯止め:月ごとに週平均50時間
清算期間が長いと、最初の月に極端に働き、最後の月にほとんど休む、という偏りが起こりえます。そこで1か月を超える清算期間では、総枠に加えて、開始日から1か月ごとに区切った各期間で週平均50時間以内という条件もかかります(最後に1か月未満の端数が出れば、それも1区分です)。
50時間×各区分期間の暦日数÷7
30日の月なら214.2時間、31日の月なら221.4時間が、その月の上限の目安になります。
どこからが時間外か〔平成30年基発0907第1号〕
- 清算期間が1か月以内:清算期間の実労働時間のうち、総枠を超えた時間。
- 清算期間が1か月超〜3か月以内:次の①と②の合計。
- 1か月ごとの区分で、週平均50時間を超えた時間
- 清算期間の総枠を超えた時間(①で数えた分を除く)
具体例で考える
M社は4〜6月(91日)を清算期間とし、総枠は520.0時間です。Nさんの実績は、4月(30日)が230時間、5月が160時間、6月が140時間、合計530時間でした。
- 4月の上限は214.2時間なので、超えた15.8時間がまず時間外(①)。4月の賃金で支払います。
- 期間合計は530時間で、総枠を10時間超えています。ただし、①の15.8時間は既に数えているので、②で新たに加わる時間はありません(530−15.8=514.2時間で、総枠の520時間以内)。
このように、①を先に除いてから総枠と比べるのが計算の順序です。
36協定の上限との関係〔平成30年基発1228第15号〕
- 単月100時間未満・複数月平均80時間以内(36条6項2号・3号)は、1か月ごとの区分で週平均50時間を超えた時間に当てはめます。
- 最終の区分では、その区分の50時間超の時間に、総枠超過のうち他の区分で数えていない時間も加えて判定します。
- フレックスの36協定では、1日の延長時間を協定する必要はなく、1か月と1年について定めれば足ります。
- 本来は生活との調和のための制度なので、長時間の時間外労働をさせるのは制度の趣旨に合いません。
週休2日の人の「曜日のめぐり」対策
週5日勤務で1日8時間の人でも、平日が23日ある31日の月は184時間になり、177.1時間の総枠を超えてしまいます。そこで32条の3第3項は、週の所定労働日数が5日の労働者について、労使協定で「所定労働日数×8時間」を限度とする旨を定めれば、その時間を総枠として使えるようにしました。
途中で入った人・辞めた人の清算(32条の3の2)
清算期間が1か月を超える場合、期間の一部しか在籍しなかった人は、在籍期間で平均をとり直します。週40時間を超えていれば、その分(33条・36条による時間外・休日労働の分を除く)に37条の例で割増賃金を払います。1年単位の変形制(32条の4の2)と同じ形の規定です。
行政解釈と細かい扱い
- 休憩〔昭和63年基発150号〕:34条の休憩の規定は外れません。一斉休憩が必要な職場では、コアタイム中に一斉に与えます(労使協定で一斉付与の例外を定めた場合を除く)。
- 労働時間の把握〔昭和63年基発150号〕:時刻を本人に任せても、会社が各日の労働時間を把握する義務はなくなりません。
- 派遣労働者〔昭和63年基発1号〕:派遣先でフレックスを使うには、派遣元が就業規則等に定めを置き、派遣元で協定を結び、派遣契約にフレックスで働かせる旨を書く必要があります。
- 過不足の繰越し〔昭和63年基発1号〕:働きすぎた分を翌期に回して相殺するのは、その期の賃金の一部を払わないことになり24条違反です。逆に、足りなかった分を翌期の総労働時間に上乗せするのは、翌期の総枠の範囲内なら24条違反になりません。
- 年少者:満18歳未満には使えません(60条1項)。
ひっかけ注意「超過時間を次の清算期間に繰り越す」は違法、「不足時間を次の清算期間に上乗せする」は総枠内なら適法。向きを逆にした選択肢がよく出ます。
ポイント1か月超の清算期間では、月ごとの50時間チェックが先、期間全体の総枠チェックが後。この順番を守れば計算問題で迷いません。
暗記総枠=40×日数÷7、月ごとの上限=50×日数÷7。特例44時間は1か月以内に限る。
覚え方「多すぎた分はその場で精算、足りない分は来月の枠内で」……実労働が総労働時間を超えた分を次の清算期間に繰り越して相殺するのは24条違反。足りなかった分を次の清算期間の総労働時間に上乗せするのは、その期の総枠の範囲内なら24条違反にならない。
- ×超過分を次の清算期間に繰り越して相殺(24条違反)
- ○不足分を次の清算期間の総労働時間に上乗せ(その期の総枠の範囲内)

ポテ向きが逆だと結論も逆!