労働基準法 ・ 第7章 柔軟な働き方の制度 ― 変形労働時間制・フレックス・みなし労働時間
7-8会社の外で働き時間を算定しにくい場合第38条の2
① 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。
② 前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。
③ 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。
ポテ外回りの日は、事業場外みなしで8時間扱いですよね?スマホに課長から「次はここ行って」って指示が来ますけど。
ロウ先生携帯電話などで随時指示を受けているなら、時間を算定できるので、この制度は使えません。大事なのは外で働くことではなく、時間を数えられないことです。
ポテじゃあ午前は社内で2時間、午後はひとりで外回りなら?
ロウ先生外回りに通常7時間かかると協定で定めていれば、社内の2時間と外の7時間で、その日は9時間です。
ポテなるほど!糸がつながってる凧は、どこまで飛んでも持ち主から見えてるってことか!
朝から取引先を回り、そのまま直帰する営業担当者。会社は、その人が何時から何時まで働いたかを正確には知りようがありません。38条の2は、こうした「会社の目が届かず、時間を数えられない」働き方について、一定の時間働いたことにして計算する方法を決めたものです〔昭和63年基発1号〕。
使えるのはどんなときか
条件は2つです。
- 労働時間の全部または一部を、事業場の外で働いていること
- 会社が働きぶりを具体的に指図・確認できないため、何時間働いたかがわからないこと
外で働いていても、会社が時間を把握できるなら2つ目を満たさず、この制度は使えません。〔昭和63年基発1号〕は、次のような場合を「使えない例」として挙げています。
- グループで外回りをしていて、メンバーの中に時間を管理する人がいる
- 無線やポケットベルなどで、随時会社の指示を受けながら働いている
- 出発前に会社で訪問先や帰社時刻などの具体的な指示を受け、そのとおりに回って会社に戻る
何時間働いたことにするか
| 場面 | みなす時間 |
|---|---|
| 原則 | 所定労働時間 |
| その仕事に通常、所定労働時間を超える時間がかかる場合 | その仕事をこなすのに通常必要とされる時間 |
| 上の場合で労使協定がある場合 | 協定で定めた時間を「通常必要とされる時間」とする |
一日のうち一部だけ外で働いた場合、原則の扱いでは、社内で働いた時間も含めてその日全体を所定労働時間働いたものとみなします。
一方、「通常必要とされる時間」でみなすときは事情が変わります〔昭和63年基発150号〕。みなしが及ぶのは外の仕事の部分だけです。社内での時間は別にきちんと数え、「社内の実労働時間+外の仕事に通常必要な時間」がその日の労働時間になります。協定で定めるのも外の仕事の時間だけで、社内の時間を含めて協定することはできません。
具体例で考える
O社(所定8時間)の営業担当Pさんは、午前中2時間を社内の会議にあて、午後は一人で顧客を回り直帰しました。外回りには通常7時間かかると労使協定で定めています。この日のPさんの労働時間は、社内2時間+外7時間の9時間です。8時間を超える1時間分については、36協定と割増賃金が必要になります。
在宅勤務への当てはめ〔平成20年基発0728002号〕
パソコンなどを使う在宅勤務は、次の3つをすべて満たせば、原則としてこの制度の対象になります。
- 仕事をする場所が、寝起きなど私生活を営む自宅であること
- 会社の指示で、機器を常に通信できる状態にしておくことになっていないこと
- 随時、会社の具体的な指示を受けて仕事をしているのではないこと
「会社の指示で常に」とは、本人が自分の判断で通信を切ることを許されていない状態のことです。業務の目的・目標・期限といった基本的な指示は、「具体的な指示」には含みません。仕事専用の個室があるかどうかは問われません。
協定と届出のルール
- 協定の届出が必要なのは、協定で定めた時間が法定労働時間(1日8時間)を超えるときだけです(労基則24条の2)。
- 協定の内容を36協定の届出に書き添えて出せば、それで届出に代えられます。
- 協定には有効期間を定めます。ただし、過半数組合と労働協約の形で結んだものは不要です(労働協約は90日前に予告すればいつでも解約できるため)。
- 労使委員会や労働時間等設定改善委員会の決議で協定に代えた場合は、法定労働時間を超える時間を定めても届出は要りません。
みなしても外れない規定〔昭和63年基発1号〕
休憩、休日、深夜業に関する規定は、この制度を使っても適用されます。深夜に働けば深夜の割増賃金が必要ですし、法定休日に働かせるなら36協定が必要です。
ひっかけ注意「事業場外で働けば、指示の有無にかかわらずみなし労働時間制が適用される」は誤り。携帯電話などで随時指示を受けている場合は、時間を算定できるので対象外です。
ポイントこの制度の核心は「外で働く」ことではなく「時間を数えられない」ことです。選択肢を読むときは、会社の指揮監督が及んでいるかどうかを探しましょう。
暗記みなす時間:原則は所定、長くかかる仕事は通常必要時間、協定があれば協定の時間。届出は8時間超のときだけ。
覚え方「みなしても“きゅう・きゅう・しん(休憩・休日・深夜)”はすり抜けない」……事業場外のみなし労働時間制を使っても、休憩・休日・深夜業の規定は適用される。深夜に働けば深夜の割増賃金が必要で、法定休日に働かせるなら36協定が必要。
- ○休憩の規定は適用される
- ○休日の規定:法定休日に働かせるなら36協定が必要
- ○深夜業の規定:深夜に働けば深夜の割増賃金が必要

ロウ先生きゅう・きゅう・しん、と唱えましょう。