労働基準法 ・ 第7章 柔軟な働き方の制度 ― 変形労働時間制・フレックス・みなし労働時間
7-9専門職に認められる裁量労働第38条の3
① 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、労働者を第一号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第二号に掲げる時間労働したものとみなす。
一 業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この条において「対象業務」という。)
二 対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間
三 対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと。
四 対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
五 対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
六 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
② 前条第三項の規定は、前項の協定について準用する。
ペン社長いいこと思いついたぞ!総務も経理も全員「専門業務型の裁量労働」にすれば、残業代の計算がいらなくなる!
ロウ先生対象業務は法令で限定列挙されていて、会社が自由に追加することはできません。しかも令和6年4月からは、本人の同意も必要です。
ポテ対象の人でも、みなし時間が9時間だったら割増はどうなるんですか?
ロウ先生法定の8時間を超える1時間分について、36協定を結んで届け出たうえで、割増賃金を払います。
ペン社長なんと、残業代が消える魔法の呪文ではなかったのか!
ポテ社長、メニューにない料理は注文できませんよ!
新薬の研究者に「今日は9時から18時まで実験しなさい」と指図しても、成果は上がりません。どう進め、いつ頭を使うかを本人に任せたほうがよい仕事があります。専門業務型裁量労働制は、そうした専門職について、実際に何時間働いたかではなく、労使協定で決めた時間働いたものとみなす制度です。システム開発やデザインのように、時間で管理しにくい仕事が増えたことも背景にあります。
対象になる業務(労基則24条の2の2第2項・告示)
対象は法令で限定列挙されており、会社が自由に追加することはできません。主なものを分野ごとに整理します。
| 分野 | 業務 |
|---|---|
| 研究・開発 | 新商品・新技術の研究開発、大学での教授研究(主として研究に従事するもの)、金融商品の開発 |
| IT | 情報処理システムの分析・設計、システムコンサルタント、ゲーム用ソフトウェアの創作 |
| メディア・クリエイティブ | 新聞・出版・放送の取材・編集、衣服・広告などのデザインの考案、放送番組・映画などのプロデューサー・ディレクター、広告などの文案の考案(コピーライター)、インテリアコーディネーター |
| 金融 | 証券アナリスト、銀行・証券会社でのM&Aの考案・助言(令和6年4月から追加) |
| 士業 | 公認会計士、弁護士、建築士、不動産鑑定士、弁理士、税理士、中小企業診断士 |
〔昭和63年基発150号〕数人のプロジェクトチームで開発をしている場合でも、チーム内で雑用や清掃などだけをしている人は、裁量労働にはあたりません。業務の名前ではなく、本人が実際に裁量をもって働いているかで判断します。
協定で定めること
- 対象業務
- みなす時間(1日あたりの時間として定める〔昭和63年基発150号〕)
- 仕事の進め方や時間配分について、具体的な指示をしないこと
- 健康・福祉を確保する措置
- 苦情処理の措置
- 本人の同意を得ること、同意しない人を解雇などで不利に扱わないこと
- 同意を撤回する手続
- 協定の有効期間
- 労働者ごとの記録を保存すること
6と7は、令和6年4月1日施行の省令改正で加わりました。それまでは企画業務型にだけあった「本人同意」が、専門業務型にも求められるようになった、という変化です。改正から間もないので、出題が続くと考えて準備しておきましょう。
記録と届出
- 労働時間の状況、健康・福祉確保措置と苦情処理の実施状況、本人の同意とその撤回について、労働者ごとの記録を作ります。保存期間は協定の有効期間中と、その満了後5年間(当分の間は3年間)です。
- 協定は労働基準監督署長に届け出ます。労使委員会や労働時間等設定改善委員会の決議で協定に代えた場合は、届出は不要です。
- 労使協定の代わりに就業規則で導入することはできません。
- 企画業務型と違い、労基署への定期報告の義務はありません。
- 健康・福祉確保措置と苦情処理措置の中身は、企画業務型と同等にすることが望ましいとされています。
具体例で考える
ゲーム会社Q社は、ゲームソフトの創作に携わるRさんたちについて、みなし時間を1日9時間とする協定を結びました。Rさんがある日に5時間しか働かなくても、12時間働いても、その日は9時間働いたものとして扱います。ただし9時間は法定の8時間を超えるので、Q社は36協定を結んで届け出たうえで、毎日1時間分の割増賃金を払う必要があります。Rさんが同意しなかった場合、Q社はこの制度をRさんに適用できず、同意しないことを理由に不利益に扱うこともできません。
みなしても外れない規定〔昭和63年基発1号〕
休憩・休日・深夜業の規定は引き続き適用され、会社は労働時間の管理を続けなければなりません。
ひっかけ注意「専門業務型では、使用者は対象業務の遂行方法について具体的な指示をしてよい」「専門業務型は本人の同意を要しない」は、どちらも誤りです(後者は令和6年4月以降誤り)。
ポイント専門業務型は「労使協定」で導入、企画業務型は「労使委員会の決議」で導入。定期報告があるのは企画業務型だけ。この2点の対比が鉄板の出題です。
暗記記録の保存=有効期間中+満了後5年(当分3年)。令和6年4月の追加=同意・不利益取扱い禁止・撤回手続、M&A業務。
覚え方「専門業務型は“法令のメニュー表”に載った仕事だけ」……対象業務は、新商品・新技術の研究開発、情報処理システムの分析・設計、取材・編集、デザインの考案、士業など、法令が限定列挙したものに限られ、会社が追加することはできない。導入は労使協定と届出、令和6年4月からは本人の同意も必要(38条の3)。
- 新商品・新技術の研究開発
- 情報処理システムの分析・設計
- 新聞・出版・放送の取材・編集
- 衣服・広告などのデザインの考案
- 士業(公認会計士・弁護士など)
- 会社が自由に追加した業務
- チーム内で雑用・清掃だけをしている人

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