労働基準法 ・ 第7章 柔軟な働き方の制度 ― 変形労働時間制・フレックス・みなし労働時間
7-10企画・立案・調査・分析の業務に認められる裁量労働第38条の4
① 賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者を当該事業場における第一号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第三号に掲げる時間労働したものとみなす。
一 事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であつて、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務(以下この条において「対象業務」という。)
二 対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者であつて、当該対象業務に就かせたときは当該決議で定める時間労働したものとみなされることとなるものの範囲
三 対象業務に従事する前号に掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間として算定される時間
四 対象業務に従事する第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
五 対象業務に従事する第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
六 使用者は、この項の規定により第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者を対象業務に就かせたときは第三号に掲げる時間労働したものとみなすことについて当該労働者の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかつた当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
七 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
③ 厚生労働大臣は、対象業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るために、労働政策審議会の意見を聴いて、第一項各号に掲げる事項その他同項の委員会が決議する事項について指針を定め、これを公表するものとする。
④ 第一項の規定による届出をした使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、定期的に、同項第四号に規定する措置の実施状況を行政官庁に報告しなければならない。
ポテ企画業務型の裁量労働も、過半数代表者と労使協定を結べば入れられますよね?
ロウ先生企画業務型は、労使委員会の決議で導入します。委員の5分の4以上で決議し、届け出ないと効力が生じません。
ポテその5分の4って、委員全員の人数で数えるんですか?
ロウ先生出席した委員の5分の4以上で足ります。9人出席なら9×4/5=7.2なので、8人以上の賛成です。
ポテなるほど!ピザ5切れのうち4切れぶんの賛成、しかも来た人だけで数えるんですね!
本社の経営企画部で、新規事業の計画を練る社員を思い浮かべてください。情報を集め、分析し、案を組み立てる仕事は、時間をかければ成果が出るとは限りません。企画業務型裁量労働制は、事業の中枢でこうした仕事をするホワイトカラーに、仕事の進め方と時間の使い方を任せ、決めた時間働いたものとみなす制度です〔平成11年基発45号〕。
専門業務型と比べて導入のハードルが高く、労使委員会という専用の機関を通さなければなりません。
対象業務の3条件
次のすべてを満たす業務に限られます。
- 事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務であること
- うまく進めるには、やり方を大幅に本人の裁量に任せる必要があること
- 手段や時間配分について、会社が具体的な指示をしないこと
事務系の仕事なら何でも対象になるわけではありません。事業方針の決定や経営のあり方といった、事業の根幹にかかわる企画・分析が対象です〔平成11年基発45号〕。
導入までの流れ
- 事業場に労使委員会を置く
- 委員の5分の4以上の多数で、必要な事項を決議する
- 決議を労働基準監督署長に届け出る(届出をしないと効力が生じない)
- 対象者一人ひとりの同意を得る
労使協定ではこの制度を導入できません。また、1か月以内の変形制などと違い、届出そのものが効力の発生要件になっている点が大きな特徴です。
決議する事項
| 事項 | ひとこと |
|---|---|
| 対象業務 | 上の3条件を満たすもの |
| 対象労働者の範囲 | 知識・経験などを備えた人 |
| みなす時間 | 何時間働いたことにするか |
| 健康・福祉確保措置 | 労働時間の状況に応じた措置 |
| 苦情処理措置 | 相談・苦情の受け付け方 |
| 本人の同意と不利益取扱いの禁止 | 同意しない人を不利に扱わない |
| 同意撤回の手続 | 同意を取り下げる方法 |
| 決議の有効期間 | 期限を定める |
| 記録の保存 | 労働者ごとの記録を残す |
労使委員会の条件
- 賃金や労働時間などの労働条件を調べて話し合い、事業主に意見を言うことを目的とする委員会であること
- 使用者と、その事業場の労働者を代表する者で構成されていること
- 委員の半数は、過半数組合(なければ過半数代表者)から任期を定めて指名されていること
- 開催のたびに議事録を作り、5年間(当分の間は3年間)保存し、労働者に周知していること
- 招集・定足数・議事、評価制度と賃金制度の説明、開催頻度(6か月以内ごとに1回)などを定めた運営規程があること
高度プロフェッショナル制度の労使委員会も、同じ条件で設けます(41条の2第3項による準用)。
行政解釈:委員会と決議
- 〔平成12年基発1号〕委員の人数は労使で決めてよいが、労使各1名だけの構成は労使委員会と認められない。
- 〔平成15年基発1226002号〕「5分の4以上」は、出席した委員の5分の4以上で足りる。
- 〔平成12年基発1号〕決議は109条の「重要な書類」にあたり、5年間(当分の間は3年間)保存する。
- 〔平成12年基発180号〕派遣法44条に企画業務型の規定がないので、派遣労働者には適用できない。
- 〔平成12年基発1号〕休憩・休日・深夜業の規定は排除されない。
- 委員であること、委員になろうとしたこと、委員として正当な行為をしたことを理由に不利益に扱わないようにし、委員が職務を円滑に進められるよう配慮する(労基則24条の2の4第6項・7項)。
定期報告と記録
- 定期報告(労基則24条の2の5):決議の有効期間の始まりから6か月以内に1回、その後は1年以内ごとに1回、労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、同意とその撤回の状況を労基署長に報告します。
- 記録の保存(労基則24条の3の2):労働者ごとの記録を、決議の有効期間中と満了後5年間(当分の間は3年間)保存します。
- 指針(38条の4第3項):厚生労働大臣が決議事項について指針を定め、公表します。健康・福祉確保措置は、全員を対象にする措置(勤務間インターバル、深夜労働の回数制限、労働時間の上限、まとまった年休取得の促進)と、個別の状況に応じた措置(医師の面接指導、代償休日・特別休暇、健康診断、相談窓口、配置転換、産業医等の助言指導)から、それぞれ1つ以上実施することが望ましいとされています。
具体例で考える
食品メーカーS社は、本社経営企画部の社員を対象に、みなし時間1日8時間で導入を検討しました。労使委員会は10人(労使5人ずつ)で、当日の出席は9人。決議に必要なのは9×4/5=7.2なので、8人以上の賛成です。決議を届け出た後、対象者のTさんが同意しなかったため、S社はTさんを通常の時間管理で働かせることにしました。同じ部でも、資料のコピーや会議室の手配だけをしているアシスタントは、そもそも対象業務にあたりません。
委員会の決議で労使協定に代える(協定代替決議)
労使委員会(または労働時間等設定改善委員会)は、委員の5分の4以上の議決で、いくつかの労使協定の代わりとなる決議ができます。
- 代えられるもの:1か月単位・1年単位・1週間単位の変形制、フレックスタイム制、一斉休憩の例外、36協定、代替休暇、事業場外・専門業務型のみなし時間、時間単位年休、年休の計画的付与、年休中の賃金を標準報酬月額相当額で払う定め(これだけは労使委員会のみ)
- 代えられないもの:社内預金(18条)、賃金の一部控除(24条)
- 決議で代えた場合に届出が必要なのは、36協定に代わる決議だけです。
3つのみなし労働時間制を並べる
| 事業場外 | 専門業務型 | 企画業務型 | |
|---|---|---|---|
| 導入の根拠 | 不要(長時間の業務は協定可) | 労使協定 | 労使委員会の決議 |
| 届出 | 協定の時間が8時間を超えるときのみ | 必要 | 必要(効力発生要件) |
| 本人の同意 | 不要 | 必要 | 必要 |
| 定期報告 | なし | なし | あり |
3つとも「一定時間働いたものとみなす」計算上のルールにすぎず、法定労働時間・休日・休憩・割増賃金の規定まで外すものではありません。みなし時間が8時間を超えるときや、法定休日に働かせるときは、36協定が必要です。また、みなしは労基法第4章の労働時間の算定に使うもので、年少者や妊産婦の労働時間規制の算定には使いません〔昭和63年基発1号ほか〕。
ひっかけ注意「企画業務型は、過半数代表者との労使協定で導入できる」「決議は全委員の5分の4以上が必要」は誤りです。導入は委員会の決議、議決は出席委員の5分の4以上です。
ポイント定期報告の「6か月以内に1回、その後1年以内ごとに1回」は、高度プロフェッショナル制度(6か月以内ごと)と混同しやすいので、表にして見比べておきましょう。
暗記委員会=半数は労働者側の指名・議事録5年(当分3年)・6か月以内ごとに開催。決議=出席委員の4/5以上。
覚え方「“5分の4で決めて、届けて、本人のOK”の3段ロック」……企画業務型は、労使委員会が出席委員の5分の4以上で決議し、労基署長に届け出て(届出が効力の発生要件)、対象者本人の同意を得て初めて適用できる。定期報告は、決議の有効期間の始まりから6か月以内に1回、その後は1年以内ごとに1回(38条の4)。
- 1労使委員会を置く
- 2出席委員の5分の4以上で決議
- 3労基署長に届け出る届出が効力の発生要件
- 4対象者本人の同意を得る同意しない人を不利に扱わない
- 5定期報告6か月以内に1回、その後1年以内ごとに1回