労働基準法 ・ 第8章 時間の規制がかからない人 ― 適用除外と高度プロフェッショナル
8-2高度プロフェッショナル制度の要件第41条の2
1. 賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の5分の4以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第2号に掲げる労働者の範囲に属する労働者(以下この項において「対象労働者」という。)であつて書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得たものを当該事業場における第1号に掲げる業務に就かせたときは、この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。ただし、第3号から第5号までに規定する措置のいずれかを使用者が講じていない場合は、この限りでない。
ポテ高プロの人も、管理監督者と同じで深夜手当はもらえるんですよね?
ロウ先生高度プロフェッショナル制度では、労働時間・休憩・休日に加えて、深夜の割増賃金の規定も外れます。
ポテじゃあ本人の同意さえあれば、決議の届出はしなくてもいい?
ロウ先生届出をしないと効力は生じません。休日の確保などの措置を講じていないときも、効果は生じません。
ポテなるほど!決議・届出・同意・休日の確保などの措置、鍵が全部そろわないと開かない金庫ってことか!
高い専門性と高い年収を持つ人について、働いた時間ではなく成果で評価できるようにする制度です。働き方改革関連法により2019(平成31)年4月1日に施行されました。
41条の管理監督者と比べると、外れる規定が1つ多いのが特徴です。労働時間・休憩・休日に加えて、深夜の割増賃金の規定も適用されません。効果が大きい分、入口の手続と健康を守る措置が厳しく求められます。
導入までの3ステップ
労使委員会の要件・指針・決議については、企画業務型裁量労働制(38条の4)の規定が準用されます。
決議で定める10項目
| 号 | 決めること | 中身の要点 |
|---|---|---|
| 1 | 対象業務 | 高度の専門的知識などが必要で、働いた時間と成果の結びつきが通常高くない業務 |
| 2 | 対象労働者の範囲 | 書面などの合意で職務が明確に決まっていて、年収見込みが基準年間平均給与額の3倍を相当程度上回る額(1,075万円)以上 |
| 3 | 健康管理時間の把握 | 事業場にいた時間と事業場外で働いた時間を足して把握する |
| 4 | 休日の確保 | 1年に104日以上、かつ4週間を通じて4日以上 |
| 5 | 選択的措置 | 下の4つから1つ以上 |
| 6 | 健康・福祉確保措置 | 働きすぎの度合いを見て、医師の面接指導や配置転換などから講じる措置 |
| 7 | 同意の撤回の手続 | 本人がいつでも抜けられるようにする |
| 8 | 苦情処理の措置 | ― |
| 9 | 不利益取扱いの禁止 | 同意しなかった人を不利に扱わない |
| 10 | その他省令事項 | 決議の有効期間、自動更新しない旨など |
対象業務の例としては、金融商品の開発、資産運用や有価証券売買の投資判断、証券アナリスト、コンサルタント、新技術・新商品などの研究開発が挙げられています。
10号の省令事項には、常時50人未満の事業場で医師を選任することや、同意や健康管理時間の状況などの記録を有効期間中とその満了後5年間(当分の間は3年間)保存することも含まれます。
5号の選択的措置(どれか1つ以上)
- 勤務間インターバル:始業から24時間以内に11時間以上の連続した休息を確保し、深夜業を1か月4回以内にする
- 健康管理時間の上限:1週40時間を超えた健康管理時間を、1か月100時間以内・3か月240時間以内にする
- 連続休日:1年に1回以上、2週間続けて休ませる(本人が請求すれば、1週間続けての休日を年2回以上でもよい)
- 臨時の健康診断:一定の要件に当てはまる人に実施する
ひっかけ注意3号(時間の把握)・4号(休日の確保)・5号(選択的措置)のどれかを講じていなければ、制度の効果は生じません。そのときは通常どおり労働時間の規定が適用されます。
具体例で考える
E証券会社は、アナリストの中村さん(年収1,400万円)に高度プロフェッショナル制度を当てはめたいと考えました。
- まず労使委員会を開き、委員10人のうち8人以上の賛成で決議します。7人の賛成では足りません。
- 決議を労働基準監督署長に届け出ます。
- 中村さんから書面などで同意をもらいます。中村さんは後で同意を撤回することもできます。
- 中村さんには年104日以上の休日を与えます。4週間ごとに4日以上という条件も満たす必要があります。
- 同じ部署にいる年収900万円の後輩は、年収の要件を満たさないので対象になりません。
運用中に会社がすること
- 決議の有効期間の始期から6か月以内ごとに、4号〜6号の措置の実施状況を所轄労働基準監督署長に報告します(41条の2第2項、労基則34条の2の2)。
- 健康管理時間が一定の時間を超えた対象労働者には、医師による面接指導を行います(安衛法66条の8の4)。
暗記4/5の決議、年収1,075万円、休日104日と4週4日、報告は6か月以内ごと。この4つの数字をセットで覚えます。
覚え方「年104日の休日は、1年をならすと“週2日ほど”のイメージ」……休日は1年に104日以上、かつ4週間を通じて4日以上確保する(41条の2第1項4号)。あわせて、決議は委員の5分の4以上、年収要件は1,075万円以上、実施状況の報告は6か月以内ごと。
試験ではこう問われる
- 「高度プロフェッショナル制度の対象者にも深夜の割増賃金は必要」→誤り。管理監督者と違い、深夜割増の規定も外れます。
- 「決議の届出をしなくても、本人の同意があれば効力が生じる」→誤り。届出が効力の条件です。
- 「決議は委員の過半数で行う」→誤り。5分の4以上です。