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労働基準法 ・ 第9章 年次有給休暇 ― 発生・日数・取り方・会社の義務

9-3労働者の時季指定と会社の時季変更第39条

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。(第39条第5項)

ポテ年休って、上司にハンコをもらって「承認」されて、初めて取れるんですよね?

ロウ先生条文の「請求」は、休む日を指定するという意味です。承認は要件ではありません。会社にできるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に時季を変えることだけです。

ペン社長いいこと思いついたぞ!3月末で解雇が決まっている人の年休は、4月に回してもらおう!

ロウ先生解雇日より後の日には変更できません。移す先の日がないからです。

ペン社長卒業したあとの日に、宿題の提出日は延ばせんというわけか!

年休をいつ使うかは、原則として労働者が決めます。ただ、全員が好きな日に休めば仕事が回らないこともあります。そこで法律は、会社に「別の日にしてほしい」と言える権利を残しました。労働者の時季指定権と、会社の時季変更権です。この2つの力関係が、この節のテーマです。

「請求」は許可を求めることではない

条文の「請求」は、会社にお願いして許してもらう、という意味ではありません。休む日を指定する、という意味です〔白石営林署事件・最高裁昭和48年3月2日、昭和48年基発110号〕。

ポイントイメージは「労働者がボールを投げ、会社は打ち返せるだけ」です。会社にできるのは時季を変えることだけで、年休そのものを消すことはできません。

年休を指定できない日

年休は「働く義務を免除してもらう」仕組みです。もともと働く義務がない日には使えません。

会社が時季変更できるとき

時季変更が許されるのは、その日に休まれると「事業の正常な運営を妨げる」場合に限られます。単に忙しい、人手が少ない、というだけでは足りません。典型例は次のような場面です。

判断の物差しになる事業は、次のように決まっています。

具体例で考える

家電量販店「あおば電機」の販売員Dさんが、12月29日から3日間の年休を指定しました。年末商戦のピークで、同じ売場の4人のうち3人がすでに同じ日を指定していました。この場合、会社が「1月中旬にずらしてほしい」と時季変更するのは、正常な運営を妨げる場合として認められやすい場面です。

一方、Dさんが3月末で解雇されることが決まっていて、3月25日からの年休を指定したとします。会社は、どれほど忙しくても、解雇日より後の日に変更することはできません〔昭和49年基収5554号〕。移す先の日がないからです。年休の権利は、解雇予告期間中に使わなければ解雇とともに消えます〔昭和23年基発651号〕。

行政解釈と裁判例

ひっかけ注意「年休の取得には使用者の承認が必要」「利用目的によっては拒否できる」は、どちらも誤りです。また、管理監督者に年休がないとする選択肢も誤りです。

年休を取った人への不利益取扱い

使用者は、第39条第1項から第4項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。(附則第136条)

年休を取ったことを理由に、賞与や手当を減らすなどの扱いをしないよう、会社に求めた規定です。ただし努力義務の書きぶりで、違反しても罰則はありません。

覚え方「“承認いらず、目的きかず”」……年休は労働者が時季を指定すれば成立し、会社の承認は要件ではない。利用目的を聞いて取得を左右することもできない。会社ができるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に時季を変えることだけ(39条5項)。

承認いらず、目的きかず
  • ○労働者が時季を指定すれば年休は成立
  • ×会社の承認がないと取れない
  • ×利用目的を聞いて取得を左右する
  • ○事業の正常な運営を妨げる場合に、会社が時季を変える
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